春の教育講座:低学年部会

言語教育とことば遊びの授業

 小宮山 繁

 この記録は2004・4・24(土)に開催される京都市サークル連協主催の「春の教育講座」の冊子に掲載するために書いたものです。報告そのものはこれ以外のことも話しますがとりあえず「あいうえおの文作り」について書きました。その他のこと〈ひらがな(清音・濁音・半濁音・長音・拗音・撥音・促音)カタカナそして漢字という文字の学習。助詞の学習、句読点の学習、主語と述語の学習、上位語と下位語の学習〉についてはまたの機会に書いていこうと思います。

はじめに

 「1年生の国語教育は言語教育が中心になる」と私は思っています。ひらがな(清音・濁音・半濁音・長音・拗音・撥音・促音)カタカナそして漢字という文字の学習。助詞の学習、句読点の学習、主語と述語の学習、上位語と下位語の学習などが、作文教材や文学教材「話す聞く」の教材に、時には「ことばの学習」の中に混じり込んでいます。
 指導する教師としては、今これを教えているのだという目的意識をはっきり持っていないと、子どもたちにはわけが分からないうちに終わってしまったということになりかねません。
 私は言語教育は、大切にしなければならないと考えています。そしておもしろくできる授業できる教育だとも思っています。それは「ことば遊び」を取り入れることで楽しくなると考えているからです。この報告はその試みです。

1)「うたにあわせてあいうえお」6月(3時間)

 1年生の時に国語教科書の一番最初に何が書いてあったか覚えておられますか。
 戦争中は、世相を反映して「サイタ サイタ サクラガ サイア」だったとか。
 私は「しろしろ こいこい ひろしさん ひろしさん はと はと ゆたかさん ゆたかさん」という教科書でした。戦後の平和の象徴「はと」と飼い犬の「しろ」が出てきました。そして出てくる名前も「ひろし」と「ゆたか」です。当時の日本が平和で豊かな社会をめざし、子どもたちには広い心を持った動物にも愛情の注げる人間に育って欲しいと願っていたことをよく表しているようです。 
 今、京都市で使っている教科書(光村出版)に(一番最初ではないのですが)「うたにあわせてあいうえお」という教材があります。挿絵も明るくてなかなかおもしろいです。こんな文章です。これは「あいうえお」などの五十音や母音に関心を持たせようという教材です。(工藤直子さんの書き下ろしの詩)
あかるい
あさひだ
あいうえお
いいこと
いろいろ
あいうえお
うたごえ
うきうき
あいうえお
えがおで
えんそく
あいうえお
おいしい
おむすび
あいうえお
 これには曲もつけてあって、歌えます。
 この学習をするのは6月です。3時間の扱いです。母音「あいうえお」の発音学習、音読学習などをした後(これについては講座で詳しく触れます)自分たちで「あいうえお」の文を作ってみました。
 では、私のクラスのみんなで作った「あいうえお」のうたです。
あかるい
あんこう
あいうえお
いるかは
いるか
あいうえお
うきうき
うれしい
あいうえお
えがおで
えをかく
あいうえお
おとした
おさいふ
あいうえお
からすが
かーかー
かきくけこ
きりんが
きれた
かきくけこ
くじらの
くじびき
かきくけこ
けむしが
けんだま
かきくけこ
こぎつね
こんこん
かきくけこ
Yくんの うたにあわせて「あいうえお」「かきくけこ」です。無理がなくて上手に作ってます。
あかるい
あした
あいうえお
いるかは
いるか
あいうえお
うしが
うろうろ
あいうえお
えきに
えんがある
あいうえお
おいもが
おれた
あいうえお
かめを
かったよ
かきくけこ
きかんしゃ
きけん
かきくけこ
くるまが
くるくる
かきくけこ
けむしに
けがはえる
かきくけこ
こまが
こわれた
かきくけこ

2)あいうえおの文作り
ことば「ことばであそぼう」9月(4時間)

ありが いけに ういている。 えだから おちたんだよ。
   
 これが、教科書にある例文です。
 この例文を見ているだけでは、あまり楽しいものが出来そうにないでしょう。しかし子どもの「あいうえお絵本」を少し見てみるとこのあいうえおの文作りで、色々な絵本作家が楽しんで絵本を作っていられるのが分かります。そして、私の経験で言いますとそういう絵本作家以上に子ども達の感性は素晴らしく楽しい「あいうえおの文」が作れます。
 では「あいうえおの文作り」について私のやり方と子ども達の作品です。
 これは、あいうえおにことばをつなげて、物語を作る遊びです。
 最初の文字を限定されることによって、思わずおもしろい組み合わせやイメージの重なりが出来て、1年生でも夏休み過ぎぐらいから十分楽しんで文作りができます。
 物語作りは小学生に可能かどうか、また意味があるのか議論があるところだと思いますが、私はこの「あいうえおの文作り」やことば遊びの中で、日本語のおもしろさや、物語作りのおもしろさが体験できるように思います。

どのように指導するかと言いますと

@黒板に「あ、い、う、え、お」と横に書き、「あ」で思い浮かべることばを言わせます。
たとえば「あり」。次に「い」のつく言葉、「う」「え」「お」とことばを思い浮かべさせます。
  あ・・・あり
  い・・・いぬ
  う・・・うさぎ
  え・・・えんそく
  お・・・おしり
と出てきました。

Aそしてこれをつないでいきます。
ありと
いぬと
うさぎが
えんそくへいって
おしりをだした
などとつなぐわけです。

B他にも作れることを考えます。
ありさんが
いぬさんのいえのまえをとおると
うさぎさんが
えんそくにいくところでした
おしりをふりながらあるいていました

  
 こんなふうに言葉や文をつないで文作りを楽しんでみようと言い、自分で作ってみようというわけです。
 あんまり上手に作ってあるものを最初に見せると、「そんなん作れない」と思うとおもしろくないので、身近なクラスの子どもの名前を使ったりすると楽しいかもしれません。
 絵本では五味太郎さんの「ことばあそび」でこの「あういえおの文作り」をしておられます。
子どものセンスは抜群です。五味さんに負けないような楽しいものが生まれます。
私が以前担任していた3年生の子どもの忘れられない傑作です。
あ・・・明日は晴れかな
い・・・いいことあるかな
う・・・うれしいことがあるかな
え・・・ええことあるかな
お・・・おもしろいことがあるかな
では、今年の1年生の作品をいくつか紹介しましょう。
あしたえんそくに
いけるかな
うしの
えをかけるかな
おいしいものがたべられるかな
あめがぽつぽつ
いまもぽつぽつ
うさぎが
えがおをくれて
おこっていたぼくもえがおになった
あめがふってきて
いけに みずがいっぱいたまって
うれしいさかな
えがおのさかな
おかあさんと にこにこ
あきに 
いちごをたべて
うちゅうじんとあった
えがおであえてうれしかった
おにぎりをいっしょにたべた

おわりに

 文作りを中心に書いていみました。子ども達の言葉に対する感性の素晴らしさが分かります。

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