当尾・大門仏谷の如来型大磨崖仏

 去年5月の連休中に「当尾石仏巡り」をしました。1年ぶりに当尾を訪問しました。
 今回は、大門仏谷の如来型大磨崖仏がお目当てです。この磨崖仏は当尾石仏中、最大で最古であることは疑いのないところなのですが、大きくは2つのなぞに包まれた仏さんです。写真で見ていたのですが、やっぱりどうしてもこの目で確かめたくて行って来ました。
藪の中三仏磨崖像
 浄瑠璃寺の近くのお店で「とろろそば」を食べました。
 そして、大門の石仏求めて出発しました。東小の「藪の中三仏磨崖像」のところで道を左へ行くと、すぐ「首切り地蔵」に出ます。それぞれの仏さんたちと再会して、さらに道を進めていきます。墓地を左に折れて、さらに行きますと神社に出ました。そして、大門石造群がありました

(1)大門石像群

 ここに集められた石仏石塔は近くにあった阿弥陀寺跡(地図には釈迦寺跡とある)や鎮守社などにあったものを集めて安置したものだそうです。双石仏、如来、地蔵など色々で、30cmから大きなものは50cm程のものです。日の当たらない暗いところに固めて向かい合うようにありました。
 ここから、歩いてすぐのところに目的の仏谷はあるのかと思ったら、なかなか。ここから一部廃屋になっている3軒ほどの立派な門のあるお宅の前を通って、集会所を通り越して、直角に右に折れて、「まだかいな」とぼやくこと数回、「こら、帰りは登りできついで」と言ったあたりで「大門仏谷阿弥陀大磨崖仏」(だったと思う)の木の案内が表れます。このすぐ横に道が谷へ向かっており、階段状に木が渡してあります。それにしてもこの降りてくる道は、林が竹に浸食されて瀕死状態のように見えました。

(2)大門仏谷如来型大磨崖仏

 しばらく、谷へ降りていきますと視界が開けて、おられました!向こうに磨崖仏です。

 こういう場所に、こういう感じでおられます。私が今まで見ていた写真はもっとup状態のものでしたから、イメージはかなり違いました。ちなみに、此岸と彼岸に川と言えるかどうかは疑問ですが、小さい流れがありました。昔の人はきっと仏さんのおられる谷ということで、「仏谷」と名づけられたのでしょう。
 さて、もう少し近づいて、拝ませていただくことにしました。

さらに近づいて見ましょう。

 高さ・幅6mの花崗岩に、舟形の光背を彫り窪め、そこに2.67mの如来座像が高肉彫りされています。肩幅が広い。近づくと肉付きのよい胸が強烈に印象に残る。結跏趺坐した膝の下に裳懸の古風な宣字座が設けられています。
 さて、問題は手なのですが、これが残念ながら欠けていて、印相が明らかでないため、謎の1つ目、果たしてこの仏は何如来なのか?という疑問になります。

 その疑問の前にもう少し、仏様に近づいてみましょう。
 左から拝ませていただきました。私はこの角度がこの仏様の最高の角度だと思います。厳しい中に仏様の孤独を感じます。

右から拝みますととこんな感じです。

 どうも頭のラホツの部分にくぼみがあるようで気になりました。そして、鼻が欠けています。落ち着きのある渋い表情です。優しさがあふれているというのではなく、どちらかというと「我が道を行く」という覚悟の表情です。

思い切って、表情だけUPしてみます。私の好きな左から。

やっぱりなあ、大門の如来は「孤高の仏」だと私は思います。媚びへつらうことなく我が道を求める厳しさをこの表情から感じ取りました。

疑問1,この仏は一体何如来?

 私は、何如来でもいいのですが、阿弥陀如来という説と、弥勒如来という説があるようです。(当尾の石仏:当尾を守る会編パンフ)でも、地元の方は大日如来だと言ってこられたと「大和の石仏」(清水俊明著:創元社昭和52年)にはありました。清水さんは「弥勒大磨崖仏」だと書いておられます。久野健さんは「石仏」(小学館昭和50年)で阿弥陀如来だと断じておられます。鷲塚泰光氏は「石仏」(「日本の石仏」147:至文堂)で「阿弥陀」説をとっておられます。

疑問2,いつ作られたのか?

 奈良時代説、平安時代説、鎌倉時代説があるようです。藤原初期説の清水氏は「迫力のあるはつらつとした造形」を根拠にあげておられます。平安時代後期説の鷲塚氏は「量感豊かな体躯」「肩の張り」「膝の広がり」の「力強さ」と台座の古風な宣字座を根拠にあげておられます。銘文でも出てきたらはっきりするのでしょうが、これからの研究課題だということのようです。

大門如来型大磨崖仏の近くに、たくさんのドクダミとヘビイチゴがありました。なつかしい子どもの頃を思い出しました。

(3)岩船寺の三重塔とあじさいそして、延命地蔵

(4)わらい仏…阿弥陀三尊磨崖像

再会してきました。横から拝ましていただいてもやっぱり笑っておられます。

2005・6・19(日)撮影
2005・6・20(月)作成

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