若草山南麓洞の仏頭石と地蔵

 近鉄奈良駅から登大路を東へ。興福寺そして奈良国立博物館。さらに左へ行くと東大寺へ向かう道をさらに東へ。奈良新公会堂を越え進むと若草山の南へ出ます。水谷川(みやがわ)の流れに沿って200m程行くと北斜面に目指す石仏があります。この辺りは洞という名前で紅葉の名所だそうです。

(1)仏頭石

 高さ107cm。六角形の頂部に如来の仏頭が丸彫りしてあります。その下六角形の六面に六観音(十一面・准胝観音・如意輪・聖・千手・馬頭)を彫り蓮華座の下に狛犬を相対して彫ってあるそうです。永正17年(1520)大僧都覚遍木食のために円玄(仁)が発願造立したという銘があるそうですが、私はどこに書かれているのか分かりませんでした。
 小学館「石仏」(久野健著)では巻頭図版の1にこの石仏が取り上げられており、「石柱部の六観音像も、室町時代の石彫としてはたいへんすぐれており、仏頭もなかなか巧みで、愛すべき遺品である」と大変評価の高い石仏です。
 不思議な石仏です。こういう例は他にあるのでしょうか?春日山原生林の中にあるのですが、周りを囲んでいる鉄網は鹿除けでしょうか?急な斜面にある石仏で、なんの案内もありませんのでその前の道を通る人もほとんど気づかずに通り過ぎて行かれます。

(2)線彫り「洞の地蔵」尊

 仏頭石の左側に倒れた状態で置かれているのが、「建長六年(1254)八月日勧進多聞丸」と銘のある線彫りの「洞の地蔵」尊。像高75cm。鎌倉中期のなかなか見事な彫りの地蔵尊です。なぜ立てないのかなと思ったのですが、どうも不安定で立てるとなると現状に土台を付け加える必要があるのでそのまま寝かされているのかと想像しました。

2005・9・10(土)撮影
2005・9・11(日)作成

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