ヤマブキ・松尾大社

関西一の山吹の名所…松尾大社

 「関西一の山吹の名所」これは、松尾大社社務所が作成された案内書にある文言です。関西一というのが何となく奥ゆかしいというか、遠慮がちだというか…そんな風に思いました。関東の方には山吹の名所ですごいところがあるのでしょうか。
 山吹の話では、例の太田道灌の話が有名です。だから関東には山吹の名所が多いのでしょうか。
 ご承知かもしれませんが、太田道灌の話、松尾大社社務所が作成された案内書から引用します。
『山吹と太田道灌』
 ある日道灌が鷹狩りに出た際、雨に降られた為近くの貧しい家を訪ねて蓑(みの)を貸してくれるように申し入れたところ、若い女性が無言で山吹の花を折って差し出しました。道灌は花を貰いに来たのではない、実にけしからんと怒って帰ってしまったそうです。後にこの話を聞いたある人が、八重山吹の花に実のならないことを、賎家にが一つもない侘びしさに掛け、風情ある古歌の心で伝えようとしたのだと道灌に教えたのです。その古歌とは
『七重八重 花は咲けども 山吹の みのひとつだに なきぞかなしき』(兼明親王『後拾遺和歌集』)
道灌は無学を恥じ、これより歌道に心寄せたといわれています。
 「山吹」はバラ科です。日本と中国にしか原生分布していません。ヤマブキ色というクレパスや絵の具があります。花の名前で色を表すものでは一番ポピュラーなものではないでしょうか。『やまぶき色の小判』という風に黄金色をさすこともあります。高貴な香りもあると書いてありましたが、私には分かりませんでした。花言葉は「気高い」。「ジャパニーズ・ローズ」の異名もあるようです。万葉時代には「恋の花」だったとか。

■松尾大社のヤマブキ

■ヤマブキ3種

松尾大社の説明書には品種としては現在「一重」「八重」「菊咲」の三種類と書いてありました。挿し木をしてふやすようです。八重が一番多く一重はよく気をつけていないと見過ごしそうです。「菊咲」というのが分かりませんでした。もう一つ落葉低木「白ヤマブキ」には種が出来るようです。そして参拝記念にと売っておられました。「白ヤマブキ」は花びらが4枚でした。種類が違うのかな。
一重のヤマブキ
八重のヤマブキ
白ヤマブキ

■松尾大社の祭神と秦氏

 松尾大社は「京都最古の神社」(松尾大社社務所発行の『松尾さん』より)です。祭神は、大山咋神(おおやまぐいのかみ)と中津島姫命(なかつしまひめのみこと)。
 私このところ大山咋神に御縁があるようです。日吉大社の祭神が大山咋神でした。少し詳しく大山咋神については調べたいと思うのですが、今わかっていることだけ記します。古事記に「大山咋神またの名は山末大主神、此神は近淡海国の日枝山に坐し、また葛野の松尾に坐す鳴鏑を用うる神なり」とあるそうです。又大山咋神は上賀茂神社の祭神賀茂別雷命の父神で、保津峡を開き大堰川を通じて葛野郡を開発した神だそうです。
 中津島姫命は、市杵島姫命の別名で、古事記に「天照大神が須佐之男神と天安河を隔てて誓約されたとき、狭霧の中に生まれ給うた」と伝えられる神で、福岡県宗像神社に祀られる三女神の一神として、海上守護の神です。
 祭神が大山咋神と中津島姫命と言うことは何れも秦氏と結びつけられる内容です。渡来一族秦氏(「はた」は朝鮮語の海を表す「パタ」からきているとのこと・つまり海を渡って朝鮮からやって来た一族)は、京都の古代を語るときに欠かすことが出来ません。701年秦忌寸都里(はたのいみきとり)が現在地に神殿を建立し、一族が長く社家をつとめたと言います。
 もともと磐座信仰であったようです。磐座遙拝所が設けられています。本殿のすぐ後ろにも大きな岩が見えます。
拝殿・江戸初期のもの 重要文化財本殿・室町初期・松尾造り

■松尾大社は酒の神様

 父親が酒造会社に勤めていたので「松尾さんは酒造りの神さん」とよく聞いていました。今回が初めての訪問だったのですが、確かに酒造りに関係するものがいくつかありました。奉納樽はたいていどの神社にもありますから、これだけでは珍しいことがありません。
神輿庫の酒樽(全国の酒造家からの奉納樽) 伏見酒造組合の常夜燈

■霊亀の滝と亀の井

 松尾大社は平安遷都後賀茂両社とともに王城鎮護の社となり866年には正一位の神階を与えられ、名神大社22社に入ります。中世以後酒の神として崇拝を受けるようになったようです。
 磐座のある大杉谷から湧き出る清泉は霊亀の滝となり、滝の近くに亀の井があります。亀は松尾大社のお使いだそうです。この井戸の水を酒に加えると腐敗しないといわれ、醸造家の信仰が厚いのだそうです。松尾神社のパンフには「滝の近くに亀の井という霊泉があり、酒造家はこの水を酒の元水として造り水に混和して用い、また延命長寿よみがえりの水としても有名です」とありました。冷たくておいしい水でした。
亀の井 霊亀の滝

2004・4・18

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