東林院の夏椿

京都市右京区花園妙心寺山内

 昨年から今年の春まで京都の椿を追いかけました。で、仕上げは夏椿ということにします。
 夏椿と言えば東林院。妙心寺塔頭の東林院は自ら「沙羅双樹の寺・京都の宿坊」とキャッチコピーを冠しておられます。お寺の発行しておられるパンフレットのよりますと、宿泊もできるようです。
 私は夏椿を見せていただきたいと思って出かけました。
 いつも公開しているお寺ではなく年間何回かの特別な催しの時だけ公開しておられるようです。チラシによりますと@小豆粥で初春を祝う会(平成17年1月8日〜31日)A沙羅の花を愛でる会(平成16年6月12日〜30日B梵燈のあかりに親しむ会(平成16年10月8日〜17日)が行われるようです。
 私は2004年6月13日(日)に出かけました。私の職場の夏椿がもうおしまいになりそうだったものですから(上記写真は私の職場の夏椿)、「早く行かなくちゃ」と思って出かけました。ところが、お寺の山門前に不吉な告知を見つけました。曰く「今年は花のつきが悪いことを承知の上でご入場下さい」。でもね、せっかくここまで来たのに帰るわけにもいきません。そして並びました。5・6組のグループが私の前に並んでおられました。そして、「沙羅の花を愛でる会」の会費を払うときになって「えっ!」と思いました。会費は1575円(お抹茶付)でした。そして5565円というコースもあることを見つけました。これはお抹茶と精進料理付でした。私はその高額さもビックリしましたが、消費税をとっておられるのにもビックリしました。お寺でこういう経験はなかなかできるものではありません。
 私が山門を出てきたら若いカップルが入り口で交渉しておられるのに出くわしました。「お抹茶いらないんですけど…」エライ!おっちゃんもそう言いたかった。けど見栄張って何にも言わんとお金払って入った。出てきた今も「高すぎるぞ!」って思ってる。営業妨害になったらあかんから(消費税をとると言うことは宗教活動ではないと言うことをお寺が認めていると言うことかな)応援できひんけど、みんな同じこと思ってるゾ!その若いカップルが出てきてどういう感想を述べるのか聞きたかったなと思いました。  
 確かに、高名な写真家が撮された写真集見て出かけたら「ガッカリ」以外の何ものでもありませんでした。庭には2本の夏椿がありました。左側の木にはいくつか花が咲いており、木の下には夏椿が落ちていました。
 でも、右にある大きな夏椿を見に行っているのです。この木につぼみがいくつも見えましたが花はありませんでした。木の下の苔にたくさんの散り夏椿という景色を期待して出かけた私たちは何もない苔を見つめるしかありませんでした。もう少し遅く6月後半にいく方が良いようです。
 東林院のパンフからの引用です。「当院には、樹齢300年といわれる、高さ15m根回り1.5mのふたまたに分かれた沙羅双樹の古木があり…」とあります。
 私が、庭の古木を遠くから(庭の縁側には大勢の人・人・人)見て写真撮ってたら、「小宮山さん」と呼ばれました。お抹茶をいただくためです。建物に入ったときに「お抹茶券」を渡したのですがそれに名前が書いてあったのです。それで、赤い毛氈の上に座ったら、すぐにお抹茶とお菓子が運ばれてきました。若い方が丁寧に「ようこそ、おいで下さいました」とあいさつされました。
 後から「しまった!」と思ったのです。運ばれてきたときならお菓子があったのです。お菓子食べてから写真撮りました。お菓子は夏椿をイメージした京都市内に支店を展開している和菓子屋さんのお菓子でした。右に葉の形の干菓子、左に茶色っぽい色した生菓子でした。
 このお寺の庭につくばいがあって、その前に屋根の瓦がありました。これは何瓦と言うのかな、屋根の両側の庇近くにあるものです。これが夏椿でした。
 東林院には、ほかに何にもないのか、私はおもしろい石仏見つけました。これは山門入ったすぐの庭と、夏椿の庭とに計3体ありました。では、その3体をご紹介します。

◆沙羅双樹と夏椿

ナツツバキ(夏椿)…ツバキ科 山林にひっそり咲く花だが、庭木として人気上昇中。花はツバキに似るが、葉は異質でつやがなく、冬に落ちる。幹の肌ははげ、サルスベリのよう。果実は五裂し、種子は扁平で、ツバキとは別属。シャラノキの別名は、釈迦入滅に際して白く色を変えた沙羅樹(フタバガキ科)と誤認されたため。
 これは「花おりおり」(朝日新聞社・2002年11月刊)の記載です。夏椿と沙羅双樹はどうも別物のようです。
 あの有名な平家物語の冒頭『祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり、沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらわす…』に出てくる沙羅双樹はこの夏椿ではないようです。
 では、広辞苑の「沙羅双樹」と「夏椿」の両方を紹介しておきます。
沙羅双樹…@インド原産の常緑喬木。幹高30mにも達する。葉は大型で長楕円形。花は小形の淡黄色で芳香がある。材は淡褐色で、堅実。建築用または器具用。樹脂は瀝青の代用。種子から油を搾る。日本で沙羅というのはナツツバキのこと。A釈尊が沙羅林の中で涅槃に入る際、その四方に二本ずつあった沙羅樹。一は枯れ一は栄えた。釈尊の涅槃に入るや、時ならぬ白花を開き、東西と南北との二双樹はおのおの一樹となって林をおおい、樹色白変してかれたという。東方の双樹を常と無常とに、西方のを我と無我とに、南方のを楽と無楽とに、北方のを浄と不浄とにたとえる。
なつつばき(夏椿)…ツバキ科の落葉喬木。高さ約10m。幹の肌は滑らかな黄褐色でサルスベリに似る。葉は楕円形で、裏面に絹毛を生ずる。6月頃、葉腋に大きな白花を一個ずつ開くが、開花後まもなく散る。山地に自生するがしばしば庭樹とされる。シャラノキ。

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