ぼたんボタン牡丹三昧

 「ぼたんのようなお嬢さん、…二の腕掛けた彫り物に…」という歌がすぐ口をついて出ます。確か弁天小僧菊の助(?)の歌でした。昭和20〜30年代の歌だったと思うのですが。「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」というのもあります。牡丹灯籠・牡丹鍋・唐獅子牡丹・牡丹雪…ぼたんは美しくそれでいて何となく任侠の世界とも関係がありそうと思うのは私だけでしょうか。 
 京都と奈良のぼたんの名所を続けて訪ねました。5月3日に京都長岡京市の乙訓寺へ。4日に奈良県桜井市初瀬の長谷寺へ。乙訓寺のぼたんは長谷寺からもらったものとか。両寺とも真言宗豊山派ですから乙訓寺が長谷寺から育て方などを教わったのでしょうか。今や乙訓寺は京都では有名なぼたんのお寺になっています。

乙訓寺のぼたん
(京都府長岡京市今里3丁目14−7・рO75(951)5759)

 乙訓寺は、聖徳太子の創建で、桓武天皇長岡京遷都の時に京内七大寺の筆頭に選ばれた大寺院であったようです。
 藤原種継暗殺事件後皇太子早良親王を幽閉したのもこの乙訓寺だとか。長岡京から平安京に遷都後、嵯峨天皇は弘法大師を別当に任命しました。平安時代に興隆を極めていたようです。信長の兵火で衰徴したあと、徳川綱吉の時再建されたようです。

ぼたんの美しさ

それほど広くない境内に2000株のぼたんが競い合うように植えられています。

長谷寺のぼたん
(奈良県桜井市初瀬731−1・рO744(47)7001)

 「初瀬詣」「長谷信仰」平安時代の昔から都人を惹き付けた長谷寺。西国観音霊場第8番のお寺です。
 長谷寺は素敵なパンフレットを作っておられます。そのパンフに「花の御寺・長谷寺」とあります。春夏秋冬たくさんの見頃の花々の紹介がしてあります。その中でもぼたんが一番有名です。新緑のあとは8000株の紫陽花だそうです。紀貫之が愛おしんだ梅、芭蕉が楽しんだ桜。一年中人を惹き付ける魅力を今も持ち続けているお寺です。
 そして本尊十一面観世音菩薩は室町時代の作で重文。身の丈三丈三尺(10m余)の大像です。右手に錫杖を持つ全国に広がる長谷観音の根本像です。仏様と寺宝の紹介には、「紫式部さんにも誉めていただきました」とあります。 
 長谷寺のぼたんを表現しようと思ったのですが、何しろ人が多くてぼたんより人が多いのではないかと思われました。仁王門・登楼・そして国宝本堂と続く建物群も魅力があります。登楼両側にぼたんが咲き誇っています。菊の展示のようにすだれがけの小屋の中にぼたんが飾られてもいました。
 お寺で出会う僧侶の方々は「ようこそお参りくださいました」と向こうから挨拶されます。これも珍しい経験です。講話を二カ所でしておられました。青年僧は「目的を持って生きる大切さを」語っていました。「長谷寺はいつもウエルカムです」というフレーズに若さを感じました。御影堂の僧侶の話は「ぼたんを見に来られたみなさんが、観音様とのご縁を結んで帰られることを」と話しておられました。本当に大勢の参拝客です。僧侶とお説教・講話は大切な仕事のうちだと思いますが、こういう大勢の人の前で話せるのは幸せなことでしょうね。
 2009・5・4作成
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