ことば遊び(1)
 小理屈編

はじめに
 桂米朝さんや枝雀さんとその一門方々の上方落語を落語会でみたり、テープやCDできいたり、落語本で読んだりしているうちに、昔から日本人はことば遊びを楽しんできたのだなと、その面白さを知りました。
 言葉には、情報や意思を人に伝える役割だけでなく、思索を深める役割もあります。伝達と言っても、事実が重視される伝達と、その思いが重視される伝達があります。皮肉や批判のための批判、そのための議論に適している言語より、何となくたよりなげでも、情があって、ユーモアと思いやりのある言語の方が、私はこれからの言語ではなかろうかと思っています。私は他と比べる力がありませんが、日本語は「おもしろさ」にかけては長い歴史の中で洗練された表現を持つ言語だと思っています。
 日本語は、「論理的な議論に適していない言語」だという論評を聞いたことがあります。勝ち負けのやりとりより、分かりあうためのやりとりこそが「平和」につながると思います。
 きっと文化が成熟している国の言語はユーモアに溢れ、歴史に応じた深まりや広がりを形成しているものだと言えましょう。私たち日本語を母語としているものは、もっともっと日本語表現を楽しめばよいのではないかと考えます。
 

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かんがえもん
(なぞなぞ) 
ことば遊び(3)
名前アナグラム
政治家など
ことばあ遊び(4)
清濁音シャレ
澄むと濁るで大違い 
ことば遊び(5)
回文
上から読んでも…
 
ことば遊び(6)
川柳を作ろう
専門学校生の川柳
 
 ことば遊び(7)
川柳を読もう
現代川柳秀句
 
   

(1)ことば遊びのおもしろさ

 1年生の子どもたちを担任していた時のことです。私は、毎日3つずつ「なぞなぞ」を出すことにしていました。子どもたちはとても楽しみにしてくれていました。
 ある日、こんな「なぞなぞ」を出しました。
「お母さんにくっついている『ぼう』ってなんだ?」
これ、正解は「あかんぼう」とか「あまえんぼう」です。
 私のクラスの一番背の低いAちゃんが、元気よく
「はい!」
と、手を挙げました。
「Aちゃん」
「はい、しぼうです。」
 Aちゃんのお母さんはとてもスマートな方で決して「しぼう」がくっついているような方ではありません。しかし、どこかで脂肪が肥満の原因であることや、お腹まわりの脂肪が話題になることを聞いたことがあるのでしょう。私はAちゃんの答えをはなまるの大正解にしました。
 そして、私が教えた子どもの中に、こんな詩を書いた子がいたなあと思い出して、また楽しくなりました。


お母さんのおなか
          三年 K
おふろの中で
お母さんのおなかを見た
お母さんのおなかは だんだん畑
わたしをうんで一だん
弟をうんで二だん
ひろいひろいだんだん畑
おへそは
だんだん畑のおとしあなみたい


 ことば遊びのおもしろさと言っても色々あります。
 一人で楽しめる『ことば遊び』もありますし、大勢でやる『ことば遊び』もあります。
 大笑いのおもしろさ、くすくす笑いのおもしろさ、やられたなあと感心するおもしろさ、その笑いの種類も様々です。
 昔からあることば遊びもあれば、つい最近テレビで流行りだしたものもあります。
 遊びですから、おもしろくないものは自然淘汰されます。
 あまり難しいルールがあるようなものも敬遠されて忘れ去られます。 
「遊び」の特性として、知らず知らずのうちになにがしかの力が身に付きます。ことば遊びの場合、『ことばの力』と関係がありそうです。
 また、集団の中で遊ぶわけですから、ルールを守って遊ばなければ楽しくありません。上手な子も下手な子もありますから、その力に応じて楽しくするための空気を読む必要もありそうです。
 私たちは、ふだんのくらしの中で様々に『ことば遊び』を楽しんでいます。『ことば遊び』は、ことばに対する感覚やセンスを磨きます。

(2)ことば遊びアラカルト

 これは、私が整理してみた分類です。教室で遊んでみようかなと先生が思われたときに役立つかなと思います。それぞれの説明は、折々UPしていこうかと考えています。
@問題を出すことば遊び A声に出して遊ぶことば遊び Bことばを言い合う遊び Cにていることば遊び
(しゃれ・語呂合わせ)
1,なぞなぞ
2,「十回言って!」遊び
3,私はなに(だれ)?遊び
4,クロスワードパズルづくり
5,数え歌遊び
6,早口ことば  
7,絵かき歌遊び
8,「弁慶が長刀」遊び
9,世界のナベアツ遊び
10,しりとりあそび
11,連想しりとりあそび
12,色とり言葉遊び
13,しゃれことば遊び@
「すむとにごるで1」
14、しゃれことば遊びA
「すむとにごるで2」
15,しゃれことば遊びB
「同音異義語遊び」   16,しゃれことば遊びC
「にたものことば文づくり」
17,数字で語呂合わせ 18,「なぞかけ」遊び
19,パロデイを楽しもう
D文をつくることば遊び E名前を使ったことば遊び F漢字ことば遊び Gゲームのことば遊び
20,ことばのかいだん遊び
21,あいうえおの文づくり
22,カルタづくり遊び
23,回文づくり遊び
24,だれが、どこで、何をした
25,かくしことば遊び
26,かいだん名前遊び    27,名前シャッフル遊び
28,アナグラム名前遊び
29,漢字のたし算ひき算
30,漢字しりとり
31,漢字あなうめ
32,漢字部首ビンゴゲーム
33,漢字神経衰弱
34,落ちた落ちた
35,魚・鳥・木  
36,伝言ゲーム 
37,たことたい  
38,はたあげ遊び
39,アップ・ダウン・キャッチ
40,くまがきた!
41,船長さんの命令

(3)ことば遊びの世界

 さて、ここからが小理屈です。私は教室の中で、もっとことば遊びが活用できないものかと考えてきました。その理論武装のために学習したことをまとめたのが、以下の文章です。
 小理屈がなくてもおもしろいことなら、子どもは楽しんでやってくれます。それは大人も同じで、私が今教えている専門学校の学生さんもおもしろがってくれます。ことば「遊び」なのですから、大上段に振りかぶるのではなく、「知らないうちに」力がついているというのが、理想です。
1,ことば遊びでつく力 
 ことば遊びを子どもたちが楽しむとどんな力がつくのでしょう。私は、遊んでいるうちに、今から述べるような力が身に付けばいいなと思っています。
@言語能力を高める
 まず、言語能力を高めることに貢献するのではないかと思います。
 言語教育の基礎的な要素として、
@表記(文字・表記法)学習
A語い学習
B文法(品詞・構文)
が考えられます。ことば遊びはこれらのことに貢献すると思います。とかく堅くなりがちな日本語の学習を楽しく進めることができる可能性を秘めた学習だと言えます。いくつかの例を挙げてみます。
 しりとり、魚鳥木などは語い指導、しゃれことば遊びでは、文字指導に関連する事項を意識させますし、同音異義語や同訓異義語などのことを学びます。「ことばのかいだん遊び」では、ことばと音数の関係を意識せざるを得ません。
 なぞなぞやクロスワードパズルでは、言葉の意味(概念)を知らなければ作れません。早口ことばは発音を鍛えます。絵かき歌はことばのもつリズム感を育てます。
 「だれが・どこで・何をした」や「伝言ゲーム」は構文を意識させます。「連想しりとり」は形容詞が大切な役目を果たします。
 
A言語活動を活発に 
1,言語活動を活発に
  ことばの力を高めることは「話す・聞く・読む・書く」という言語活動を通じて行われます。この活動は外言としての活動になるのですが、実は内言として頭の中での言語活動が行われています。「ことばの力」を高めることは内言・外言双方を鍛えることで成立する活動なのです。言語という記号を通して人間は知識を自分の中に取り入れ、ものを考えます。そして話したり読んだりしてそれを人に伝達します。
 ことばを通して、リズムを意識したり、歌ったり、描いたり、読んだり、書いたり、質問したり、答えたり、時には体を動かしたりのことば遊びの活動が「話す・聞く・読む・書く」などの言語活動を活発にすることは間違いありません。
 ことば遊びは子どもたちを賢くする活動なのです。
Bことばに対するセンスをみがく
日本語のもっているおもしろさ、修辞法など、ことば遊びは日本語の魅力を開示してくれます。ここで培われた力が、魅力的な日本語の担い手を育てることも確かだと考えます。
 また、ことば遊びはユーモアのセンスも鍛えてくれます。私はことば遊びは笑いのセンスを育てると思っています。笑いは人間を楽天的にし、人間関係を円滑に進める原動力になると思います。
C伝え合い分かり合う力が
 ことば遊びの中には集団で行うものが多数あります。話し合う、そして分かり合うということが今ほど強調される時代はかいように思います。ことば遊びは、ことばのやりとりが楽しいという実感や安心感連帯感を高めることにつながると思います。

2,ことば遊びは物語づくり
 物語を作れと言われても、かんたんに作れるものではありません。今教科書では、名作の続き話を作らせたり、地図を見ながら冒険物語を作らせるようなお話作りが進められています。物語を作るにはおもしろい筋立ての構想を立てる必要があります。これはなかなか難しいことです。
 ことば遊びの物語づくりは、思いがけないことばの結びつきでうまれる物語です。そのおもしろさがことば遊び物語づくりの醍醐味の一つであると私は考えています。なれてくれば、意識的に作ろうと努力できるよいにもなれそうです。
 「しゃれことば遊び」「サンタクロースカルタ作り」「あいうえおの文づくり」などで作られた作品はそれだけで短い物語だと言えます。
 こういう楽しさを比較的簡単に手に入れられるところにことば遊び物語づくりの魅力がありそうです。
3,縁語と小話など
 林家三平(当代林家正蔵の父)という落語家がおられました。テレビの司会やCMで大活躍の売れてる落語家でした。 この人が高座にあがると、必ず「小話」をしておられました。

「おや、ハトが何か落としていったよ」
「ふーん」


「パンツが破れた!」
「またかい」


 こういうのを連発して爆笑を誘っていました。小学生だった私は、落語家というのはこういう『小話』をする人たちだと思っていました。後年必ずしもそうではないことが分かりましたが。
 この小話のおもしろさを解説しても仕方がありませんが、この笑いは、縁語のおもしろさにあります。
 縁語というのは、字の通りで、「縁があることば」です。意味の関連性を持つことばをしゃれとして使うのが縁語です。そして、あることばに対して、その縁を意識しておもしろくて短い話に仕上げたものが『小話』になります。もう二つ。


「あなたは、キリストですか?」
「イエス」


「バケツに穴が…」
「そこ(底)には気づかなかった」


 ところで、サザエさんの家族の名前は海の生き物で統一されており縁語です。
 「花の色は うつりにけりな いたずらに わがみよにふる ながめせしまに」
小野小町の歌です。これは、掛詞の歌として有名ですが、縁語表現でもあります。
 ふるは、「古る」と「降る」という掛詞になっています。これは同音異義語の活用であり、「眺め」と「長雨」も同音異義語です。そして「古る」と「眺め」そして「降る」と「長雨」は縁語として意識されて技法的にはこの歌が成立しています
。 
 4,しゃれと語呂合わせ
 しゃれも語呂合わせも同じじゃないかというのは厳密には間違っているようです。
 両方とも同じ音を用いたことば遊びです。
 しかし、しゃれは同音異義語を用いてすることば遊びであるのに対して、語呂合わせは、同じような音の(類字音)異義語を用いたことば遊びだそうです。
 語呂合わせは、「地口」といい、大阪では「口合」といったそうですが今はほとんど死語ではないでしょうか。
 ただ、洒落と語呂合わせ両方とも合わせて「しゃれ」ということがあるようで、混乱してしまうのです。ここでは、しゃれと語呂合わせを分けつつ、しゃれとして扱いました。
 日本語は同音異義語が多い言語です。ですから、かんたんにしゃれが作れるのです。
 一方、清音を濁音に変えるだけで、ことばが変化するのも日本語の特徴だそうです。母音を同じにして、一字か二字音を変えるだけで他のことばに変わります。促音、撥音、拗音、拗長音などを加味すると語呂合わせが完成するのです。
 同音異義語と類字音異義語を駆使して、しゃれは作られます。それは、なぞなぞへと発展することもあります。落語のオチになることもあります。
 上方落語「口合小町」は、浮気性の亭主を得意の「口合」(語呂合わせ)で家にいつかせようという女房の話です。この女房が次々繰り出す口合に、亭主がかえって心配して「気がふれた」のではないかと思い、家にいることを約束するという結末です。
 語呂合わせは、多少無理がある方がおもしろいと言えます。 
5,折句(アクロスティック) 
 折句(アクロスティック)とは、詩や文書の特定の場所に意味をなす単語や文を折り込む技法を言います。
 ・からころも きつつなれにし つましあれば はるばるきぬる たびぞおもう
 この和歌には「かきつばた」の五文字が折り込まれています。
 徒然草で有名な吉田兼好が友人の頓阿にこんな和歌を送ります。

「夜もすずじ 寝ざめの刈穂 手枕も 真袖も秋に へだてなき風」
 これは、「沓冠(くつかんむり)」と言って、各句の末尾と頭のことばをつなぐと、意味をなします。「よね(米)たまえ(賜へ) ぜに(銭)もほし」となり、米とお金の無心をしているのです。
 頓阿は、返歌をします。 

「夜も憂し 寝たくわが背子 はては来ず なほざりにだに しばし訪ひませ」
「米はなし 銭少し」
 こういうことば遊びを昔から日本人は楽しんでいたのです。

 「あいうえおの文づくり」「かくしことば遊び」を折句遊びとして紹介しましたが、子どもたちは、案外折句表現とよく出会っているのです。
 「こそあどことば」は折句表現ですし「5つのH1つのW」もそうです。
 「おあさす運動」というあいさつ運動は「おはようございます・ありがとうございます・さようなら・すみません」というあいさつを言おうという運動です。
 「おはしもて」は緊急避難時の約束です。「おさない・はしらない・しゃべらない・もどらない・低学年優先」です。
 他にも料理の「さしすせそ」(砂糖・塩・酢・醤油・ソーダ)というのもあります。
 主婦の手抜きメニュー「お母さん休め」は「オムレツ・カレーライス・サンドイッチ・ハヤシライス・焼き飯・スパゲティ・目玉焼き」のことで、これも折句表現です。
会社の名前にも折句が使われています。「NHK」は「日本放送協会」です。
 
 私たちは、忘れそうなことを折句を使って覚えるのに使っているのです。
 国語学者だった故金田一春彦さんは、出かける前に「ハトが豆食ってパッ」と言いながら、外出時の携行品をチェックされたとか。ちなみにその品は、「ハンカチ・時計・がまぐち・万年筆・名刺入れ・靴べら・手帳・パス(定期入れ)」だそうです。
 直木賞作家の故藤本義一さんのお父さんは、朝洗面台で鏡を見ながら「おい悪魔」と言っておられたとか。子ども心に自分を悪魔という父親に鬼気迫るものを感じたそうです。
 ところが、それは、「おごるな」「いばるな」「あせるな」「くさるな」「まけるな」という五戒のことばであったそうです。
 しばらく前、「KY」ということばが評判になりました。「空気読めない」だそうです。折句は今も生きています。 
6,上方落語に出てくることば遊び 
 上方落語には、ことば遊びをそのまま使っているものがいくつかあります。その代表的なものをいくつか紹介します。一昔前の人が、どんなことば遊びをしていたのかが垣間見えます。
 落語が、ことば遊びそのものとも言えます。オチといわれているものはほとんどが、ことば遊びで、そこで現実に引き戻す役目をになっています。「なるほど」とか「やられたなあ」とか「まただまされた」と聴衆は思う仕組みにことば遊びは力を発揮しています。


@兵庫船〜州づくし・なぞかけ
1,州づくし
 これは、舟に乗り合わせた者どうしがそれぞれの住んでいる土地を尋ね合うところから始まります。
 上州だというもの、三州(三河)、雲州(出雲)、和州(大和)、泉州(堺)、勢州(伊勢)、因州(鳥取)、播州(播磨)などが出てきます。
 そして最後、ごう州だという人に、「ああ、江州は近江の国」と言うと、「いやあ、オーストラリア」とぼけてこの「州づくし」は終わります。「○○づくし」ということば遊びには他にも「山づくし」「川づくし」などがあるとか。

2,なぞかけ
 お題を言って(○○とかけて)、解きます(□□ととく)。その心は(△△)。というあれです。。
 兵庫船に出てくるなぞかけは、こんな様子です。
・一の字とかけて、感心なお寺の小僧さんととく。その心は、辛抱(心棒)すれば住持(十字)になる。
・いろはのいの字とかけて、船頭さんの手ととく。その心は櫓の上にある。
・いろはにほへととかけて、吉野山の花ざかりととく。その心は散りぬる前ととく。

A『田楽喰い』〜ンまわし〜
 酒の肴に横町の豆腐屋の田楽を食べることになった町内の若い連中が、ただ食べたのではおもしろくないというので、「ンまわし」という遊びを始めます。ゲンを祝って「運」がつくように「ンまわし」をするというところを見ると、祝い事の時にこういう遊びをしたのかもしれません。
 はじめは、一本から二本とすすみ、「みかんきんかん、こっちゃ好かんと四本貰おか」あたりから調子が出てきます。
「『てんてん天満の天神さん』と六本貰うわ」
「エー、本山坊さん看板ガンと七本貰おか」
「エー、産婦三人、みんな安産、産婆さん安心と十本貰おか」
 そして、何と四十三本もらうやつが出てくる。それが、こんな文句です。
「先年神泉苑の門前の薬店、玄関番人間半面半身、金看板銀看板、金看板根本万金丹、銀看板根元反魂丹、瓢箪看板、灸点」
 この意味は
「しばらく前に、京都の神泉苑の門前を通ったら、薬屋がある。その薬屋の玄関番みたいに人体模型(よく理科室のなるようなあれ)が置いてある。他にも金看板と銀看板があって、金看板には「根本万金丹」銀看板には「根元反魂丹」書いてある。瓢箪型の看板には「灸点」と書いてある」
ということだそうです。


B『かけとり』〜語呂合わせと・折句の数え歌〜
 大晦日に来る節季の払いを、熊さんが何とか断る噺である。相撲の好きな八百屋には相撲の話で、芝居好きの醤油屋には歌舞伎の声色で、喧嘩好きの酒屋には、けんかをふっかけて退散させる。その一番最後に洒落好きの米屋が出てくるのである。
 熊はんは、語呂合わせで洒落の幸兵衛で「しゃれこうべ」とことば遊びで挑発する。
 米屋は負けずに、折句の数え歌と語呂合わせで応戦する。
 熊はんの言う十升は一斗になることを利用した数え歌の折句の完成で熊はんの勝ちになって「さげ」になるというしてやったりのジ・エンドを迎え、ドドドーンとばちが入るという趣向。
 大変よくできたことば遊びを利用した話である。
熊「いや、米屋の幸兵衛はんは、洒落が上手や。あんな洒落の名人ないなあ。洒落の幸兵衛はん、しゃれこうべと、こないなってまんねん。有名だっせ。あんたのしゃれこうべは、骸骨(外国)にまで聞こえたある」
米「も、そんなおかしな洒落言いなや」
熊「エー、そこんところでなあ、ひとつまあなんとか」
米「何がなんとかや、何がなんとかや。しょうもないそんなおかしな洒落言うて、ごまかそうと思うたかてあかんで。ことわけ言うのんかい、お前はん。あのなあ、つい三日ほど前やないかいな。チェッ、ようそんな大きい顔して言えるなあ。…一升(一生)のお願いや、二升(二度)とは申しません。お金ができたらすぐに持って三升(参上)いたしますと四升(殊勝)らしいことを言うさかい、五升(後生)になると思て持ってきてやったのに、ようそんな六升(毒性)なこと言うなあ。この上は七(質)、八升置かしても払わしてみせるで、この九升(糞)ったれめが」
熊「へい。払いは一斗(一統)にお断りしとおります」
(引用はいずれも『米朝落語全集』 創元社)より


 他にも、「小倉船」にはおもしろい「なぞなぞ」のやりとりがあります。「地獄八景亡者戯」には、三途の川で鬼が、死んだ理由で渡舟料を決めるという「かけ算九九の語呂合わせ」をします。ここでは、縁語と数字の語呂合わせで笑わせてくれます。
 落語は、ことば遊びの宝庫です。
 
7,京のわらべ歌とことばあそび 
 おぼえやすくてリズミカル、しかも役に立っておもしろい。わらべうたは子ども文化の代表です。これにことば遊びが使われています。その中の三つを紹介します。

@「丸竹夷」は折句
丸 竹 夷 二 押 御池     (丸太町 竹屋町 夷川 二条 押小路 御池)
姉 三 六角 蛸 錦       (姉小路 三条 六角 蛸薬師 錦)
四 綾 仏 高 松 万 五条 (四条 綾小路 仏光寺 高辻 松原 万寿寺 五条)
雪駄 ちゃらちゃら 魚の棚 (魚の棚)
六条 三哲 とおりすぎ (六条 三哲)
七条 こえれば 八 九条 (七条 八条 九条)
十条東寺でとどめさす (十条)


 これは、京のわらべうた「丸竹夷」です。京都は東西南北の通りが碁盤の目のように直角に交差しています。「丸竹夷」は横の通り(東西の通り)の名を折句にして紹介しています。( )の中が実際の通りの名前です。今も町の中で道に迷えば、この歌を歌いながら自分のいる場所を確認します。
 もちろん縦の通り(南北の通り)の歌も「寺 御幸 麩屋 富 柳 堺…」とあります。


A「ぼんさん頭は丸太町」は語呂合わせ
 「ぼんさん頭は丸太町」も通りの名前をおぼえるわらべうたですが、こちらは語呂合わせのおもしろさで覚えます。子どもに覚えやすいように昔の人は知恵出してくれました。

ぼんさん頭は 丸太町
つるっとすべって 竹屋町
水の流れは 夷川
二条で買うた 生薬を
ただでやるとは 押小路
御池で出逢うた 姉三に
六銭もろうて 蛸買うて
錦で落として 四かられて
綾まったけど 仏々と
高がしれてる 松どしたろ


B「四方の景色」は数え歌
 「四方の景色」は手まり歌です。京の都の景色を入れながら、数え歌にしています。
 二軒茶屋は、祇園祭で有名な八坂神社の南門にあった茶店です。中山は清水寺の南にある京都を俯瞰できる和歌に詠われた場所。


ひい ふう みい よ
四方の景色を 春とながめて
梅にうぐいす ホホンホケキョとさえずる
あすは祇園の 二軒茶屋で
琴や三味線 はやしテンテン手まり歌
歌の中山 ちょ五 五五
ちょ六 六六
ちょ七 七七
ちょ八 八八
ちょ九が 九十で ちょと 百ついた
ひい ふう みい よ
  
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