ことば遊び(7)
現代川柳秀句

■作品集
はじめに私の好きなサラリーマン川柳
・歴代サラリーマン川柳一位作品(日本生命主催)
・シルバー川柳
・高校生川柳
・田辺聖子さん「田辺聖子の人生あまから川柳」より
・鶴彬の川柳
■資料編川柳の歴史と小理屈
 
 ここで紹介している川柳や川柳についての歴史などは、私が専門学校で、講義資料として作成したものである。参考にした書物のおかげで作成できたのだが、その書名を忘れていて、思い出せないものが大半である。誠に申し訳ないことである。
HPへ戻る  ことば遊び(1)
小理屈
ことば遊び
 
ことば遊び(2)
かんがえもん
(なぞなぞ) 
ことば遊び(3)
名前アナグラム
政治家など
ことばあ遊び(4)
清濁音シャレ
澄むと濁るで大違い 
ことば遊び(5)
回文
上から読んでも…
 
ことば遊び(6)
川柳を作ろう
専門学校生の川柳
 
ことば遊び(7)
川柳を読もう
現代川柳秀句
 ことば遊び
しゃれことば遊び@
同音訓異義語
 はじめに〜私の好きなサラリーマン川柳
 第一生命主催の「サラリーマン川柳」 が川柳ブームに果たした役割は大きい。
・賞罰にバツイチと書く律儀者
・まだ寝てる帰ってみればもう寝てる
・遺産分け母を受け取る人がない
・この俺を雇わないとは目が高い
・一生を賭けた会社会社に先立たれ
・石の上三年経てば次の石
・さてどこに停めたかしら駐車場
・一戸建手が出る土地は熊も出る
・とこや行く金ひまあれど髪がない
・目は一重アゴが二重に腹は三重
・ねむれない!ひつじのよこにぶたがいる
・貯金なし証券もなし被害なし
■サラリーマン川柳歴代1位 
おもしろい上に内容とネーミングは見事に世相を反映している。
第4回 ボディコンを 無理して着たら ボンレスハム (となりのトトロ)
第5回 まだ寝てる 帰ってみれば もう寝てる (遠くの我家)
第6回 いい家内 10年経ったら おっ家内 (自宅拒否症)
第7回 連れ込むな! わたしは急に 泊まれない (紫武都)
第8回 やせてやる!! コレ食べてから やせてやる!!(栗饅頭之命)
第9回 『ゴハンよ』と 呼ばれて行けば タマだった (窓際亭主)
第10回 「早くやれ」 そう言うことは 早く言え (新舞い)
第11回 わが家では 子供ポケモン パパノケモン (万年若様)
第12回 コストダウン さけぶあんたが コスト高 (四万十川 信彦)
第13回 プロポーズ あの日にかえって ことわりたい(恐妻男)
第14回 ドットコム どこが混むのと 聞く上司 (ネット不安)
第15回 デジカメの エサはなんだと 孫に聞く (浦島太郎)
第16回 タバコより 体に悪い 妻のグチ (−小心亭主−)
第17回 「課長いる?」 返ったこたえは 「いりません!」(ごもっとも)
第18回 オレオレに 亭主と知りつつ 電話切る(反抗妻)
第19回 昼食は 妻がセレブで 俺セルフ(一夢庵)
第20回 脳年齢 年金すでに もらえます (満33歳)
第21回 「空気読め!!」それより部下の 気持ち読め!! (のりちゃん)
第22回 しゅうち心なくした妻はポーニョポニョ(オー マイ ガット)
第23回 仕分け人 妻に比べりゃ まだ甘い (北の揺人)
第24回 久しぶり〜 名が出ないままじゃあまたね〜 (シーゲ)
第25回 「宝くじ 当たれば辞める」が 合言葉 (事務員A)
第26回 いい夫婦 今じゃどうでも いい夫婦(マッチ売りの)
第27回 うちの嫁 後ろ姿は フナッシー (段三っつ)
第28回 皮下脂肪 資源にできれば ノーベル賞 (イソノ家)
第29回 退職金 もらった瞬間 妻ドローン(元自衛官) 
中高年パワー炸裂シルバー川柳
誕生日 ローソク吹いて 立ちくらみ
二世帯を 建てたが息子に 嫁が来ぬ
起きたけど 寝るまでとくに 用事なし
延命は 不要と書いて 医者通い
「お年です」 それが病気か 田舎医者
ボランティア するもされるも 高齢者
聴力の 検査で測れぬ 地獄耳
探しもの やっと探して 置き忘れ
クラス会 食後は薬の 説明会
無農薬 こだわりながら 薬漬け
留守電に ゆっくりしゃべれと どなる父
定年だ 今日から黒を 黒と言う
TPP 私の財布は PPP
爪を切る 腹が邪魔して 息切れる
入れ歯とり 魔法使いと 孫びびり
あきらめて 買えば出てくる 探しもの
ボケてやる 最後の武器を 持っている
ボケたけど 悪口だけは スラスラと
一つ覚え 二つ忘れて 夜が更ける
大病院 一冊読んで 名を呼ばれ 
若いもんも負けていない高校生川柳・狂歌 
時間割 眠れる教科 まず探す
授業中 あたったときは わらうだけ
「わかりません」 一人が言うと みな続く
ふでばこを 落としてめざめる 授業中
昼間から 抱き合う僕らは 柔道部
カンニング やりて空しき 家路かな
「店長」と 先生呼んで バイトばれ
君に会う ただそのために 通う図書館
見渡せば 右も左も 藪の中 催眠術師 現国教師
成績は 小学校が最盛期 中学衰退 高校滅亡
雨の日に 傘もささずに 歩いてる 君を見つけて どこまでも行く
好きな人 できて初めて気付くこと 一に優しさ 二に笑顔
僕のダチ みんないい奴 すごい奴 やさしいけれど バカしかいない
帰宅して まず最初にすることは 自分を装う 仮面をとること 
  『田辺聖子の人生あまから川柳』(2008)
「川柳は人間の弱みや、ひけめ、劣等感を題材にするが、そのあしらいかたに他の文芸とはひと味違う味を盛る」
「浮世のただごとの中から真実をつまみあげる」

・なんぼでもあるぞと滝の水は落ち(前田伍健)
・よくよくの心配ごとに犬もおき(岸本水府)
・かかるときポンと出したい金がない(川村伊知呂)
・このご恩忘れませんと寄りつかず(大田佳凡)
・今日もまた突き飛ばされて世を送り(上田芝有)
・かしこい事すぐに言いたくなる阿呆(亀山恭太)
・誰がいうてましたと女立ち上がり(近江砂人)
・この人も妻子が待つか手のぬくみ(林照子)
・いじめ甲斐ある人を待つ胡瓜もみ(田頭良子)
・命まで賭けた女てこれかいな(松江梅里)
・大日本天気晴朗無一文(川上三太郎)
・部分品がもうおまへんと言われそう(麻生路郎)
・亡くなる数ヶ月前入院中の句
・子は育つ壁はぼろぼろ落ちよるが(岩井三窓)
・やさしうにいえば子供は泣き直し(内藤凡柳)
・「自分の身のかわいそうさがわかる」から
・一人去り二人去り仏と二人(井上信子)
反戦川柳歌人獄死した鶴彬の川柳
・修身にない孝行で淫売婦(昭和11・27歳)
・凶作を救えぬ仏売り残し(昭和11)
・暁を抱いて闇にゐる蕾(昭和11)
・こんなでっかいダイヤ掘って貧しいアフリカの仲間達(昭和11)
・待合で徹夜議会で眠るなり(昭和11)
・嫁入りの晴れ着こさへて吐く血へど(昭和11)
・春を待つ地熱に続く休火山(昭和雪花事件12・28歳)
・ヨボと辱められて怒りこみ上げ朝鮮語となる(昭和12)
・母国を掠め盗った国の歴史を復習する大声(昭和12)
・ユダヤの血を絶てば狂犬の血が残るばかり(昭和12)
・タマ除けを産めよ殖やせよ勲章やろう(昭和12)
・をんどりみんな骨壺となり無精卵ばかり生むめんどり(昭和12)
・屍のゐないニュース映画で勇ましい(昭和12)
・万歳とあげて行った手を大陸において来た(昭和12)
・手と足をもいだ丸太にしてかへし(昭和12)
・胎内の動きを知ること骨(コツ)がつき(昭和12) 
@小理屈1「そもそも川柳とは」 
■川柳三要素
「うがち」…発見、句でハッとさせること
「軽み」…サラリと意が取れるけれど奥行きがある句で、読み手の頷きを誘うこと
「滑稽」…笑いは爆笑ではなく心をくすぐる笑い
■川柳三部門
ユーモア川柳…クスリと笑いを誘う川柳
叙情的川柳…感情や気持ちがじんわり漂う川柳
時事川柳…社会の動向を絡めた川柳
■「客観的」は川柳の誉め言葉
■川柳は「標語」でもないし「ダジャレ」でもないし「語呂合わせ」でもない
  標語…火の用心 マッチ一本 火事の元
  ダジャレ…IT化いいえわが家は愛低下
  語呂合わせ…おみくじを引いたはよいが今日も凶 
A小理屈2「川柳の歴史」 
川柳の十七文字は、俳諧連歌の平句が独立したもの
連歌の平句の場合、季語は必要ないし切字も不要。これが川柳につながる。
和歌から川柳への大まかな流れ
和歌(短歌)→連歌→俳諧連歌→前句付け(江戸川柳・柄井川柳)→狂句→「新川柳」とでも言うべき運動(阪井久良岐と井上剣花坊)→川柳 
■柄井川柳(1718〜1790)
江戸時代中期の前句付け点者。江戸浅草の人。1757年(宝暦7)川柳評万句合)を発行、他の点者を圧倒する名声を得た。その撰句を川柳点、のちには川柳と称した。
B小理屈3「作句の方法(前句付けから冠付け)」 
■川柳を作る方法…前句付け
七・七(前句・課題)が先に決まっていてその後に「五・七・五」の付句を加える。この付句が川柳の始まり。連歌では前句付けするのは平句である。柄井川柳は江戸時代この前句付けの人気点者として活躍。後川柳死後「柳多留」として出版。
■付け句の歴史
@山崎宗鑑と付け句
『犬菟玖波集』の付句(山崎宗鑑作)
@切りたくもあり切りたくもなし   
ぬす人をとらえてみればわが子なり
さやかなる月を隠せる花の枝
こころよき的矢の少し長きをば(これは独立していない…松永貞徳の批判)
Aさびしくもありさびしくもなし
世をそむく柴の庵に銭もちて
Bにがにがしくもおかしかりけり
我が親の死ぬるときにも屁をこきて
■山崎宗鑑の逸話
@それにつけても金の欲しさよ
実隆(貴族)「といひし昔のしのばるるかな」
宗鑑(衣食住足りぬ吾々にふさわしいのは)
      「それにつけても金の欲しさよ」
*俳句には季語を最初の五文字に入れて「根岸の里のわび住まい」を続ければ俳句になるという便利な七五があるという。
A宗鑑辞世の句
宗鑑はいずくへと人の問うならばちとようありてあの世へといへ *よう(用と腫瘍(しゅよう)の意のよう)
B上の客人は立ち帰り中の客人日帰り泊まりの客は下の下
玄関先に書いてあった文句
A柄井川柳の前句付け(万句合)
にぎやな事にぎやかな事
ふる雪の白きをみせぬ日本橋
はずかしき事はずかしき事
ほれて居たやうにも無ひとおしやられ
■柄井川柳作句方法2
「冠付け」(万句合)
例えば「思うまま」を最初の五(冠)に持ってきて作句する方法
■前句付けからの脱皮
前句が無くても独立したおもしろさが伝わる句集「柳多留」
・かみなりをまねて腹がけやっとさせ
・初ものが来ると持仏がちんと鳴
・子が出来て川の字形リに寝る夫婦
・女房と相談をして義理をかき
・碁敵は憎さもにくしなつかしさ 
 C小理屈4「柄井川柳以後そして近代」
■川柳の停滞…狂句
江戸時代から明治まで 教訓的であったりダジャレの延長であったり。
・咲き満ちた花は無常のさとし草
・人も斯くかをれ闇夜の野路の梅
・鼻歌でけづる板にわふしがなし
・右に出る彫刻はなし甚五郎
・結構毛だらけ繁盛の理髪床
■狂句から近代詩へ(自我の確立)
狂歌からの独立…明治時代、正岡子規が俳句で果たした役割と同じく、近代精神で川柳を革新したのが阪井久良岐と井上剣花坊であった。
■阪井久良岐と井上剣花坊の川柳刷新
●久良岐の主張…川柳と狂句とを区別せよ。、川柳は風俗詩、人事詩。或る趣味の滑稽風刺を含むなり。狂句は、或る意味程度に於いての滑稽風刺詩なり。江戸川柳への回帰を目指す。
・暮れになって之も買わねばよかったに
・偽善らしいからと乞食にくれず行き
・とと様は今におみやを持ってくるぞ(出征)
●剣花坊の主張…吾々は川柳の名を用う。しかし必ずしも古川柳の形式、内容を悉く学ばんととするにあらず。その長所をしてますます長ぜしめ、しこうして明治文壇に新式短詞を打ち立てんとするに他ならず。真個、滑稽趣味を申し分なく注入せんとするに他ならず。絶対無上の滑稽詩を、健全に発達せしめんとするに他ならず。
・小説家の妻亭主のは読まぬなり
・和製ハイカラコスメチック顔に塗り 
*コスメチックは整髪用のチックのこと
・出さへすれば蚊程のへぼも文学士
■川柳革新期の川柳集「新柳樽」より
・美人去ってカルタ会散会し
・厚化粧して涼みとは解せぬなり
・一ぺんはどうせ死ぬさとふぐを食い
・恋文のやうに読むのは里の文
・見あひの写真二三年前のやつ 
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