旭山動物園とカバ
2014・8・4(月)撮影
2014・8・6(水)作成
2014・8・4(月)11時半過ぎ、旭山動物園の無料駐車場はすでに満車。動物園前の斜面にある民間の斜面だらけの駐車場(500円)が盛んに呼び込みをしている。旭山動物園フィーバーが起こる前までは、違った景色だったのではなかろうか。 入口では混雑なく820円の入場券が買えた。 旭山動物園のHPによると、2013・11・21、キリン舎・カバ館がオープンしたとある。そしておよそ一年間かけて行われた工事の様子も順次UPされている。 そのせいかどうか、入口でもらうパンフの表紙は、カバが水の中の階段を降りているという今まで見たことがないような写真である。動物園パスポートにもカバの絵。これは今カバの展示方法に相当な自信を持っておられるのだろう。 どんなところでどんなカバさんに会えるのか、楽しみである。 絵本作家のあべ弘士さんはここで飼育員をされていたそうで、左のパスポートの絵もあべさんの作。あべさんの絵と思われるものが随所にあった。 |
(1)カバ館
カバ館は、正門入口から真っ直ぐの道を山を登って行き、左に折れたキリン舎と隣接してあった。
ここで飼われているカバは一頭。名前は「百吉」。三才だそうだ。百吉は外のプールにいた。どこの動物園でもそうだが、夜行性の動物であるカバは昼は水の中で寝ている。午後一時に中へ入れて水の中で動き回る様子が見られるらしいのだ。残念ながら私は団体行動で、12時45分に入口前集合で、それは見られない。外のプールに浮いている百吉は後で見ることにして、その施設を見せてもらうことにした。
(2)カバ館内部観覧施設
左上は横から強化プラスチック越しに水の中を見られるようにしている施設。中ののぞき窓はいくつもあったのだが、相当傷ついていて中が見えない。「ひっかいたのですか」と聞いたら、「噛んだ」のだそうだ。右の写真は水の中のカバの動きを見るための窓である。カプセルのようなものが見えるが、左の丸窓である。カバにしたら、これは何だと思って噛みついているのかも知れない。水が美しいなと感心した。大阪天王寺動物園も水の中が見えるように、1997年13億円かけて濾過設備をしておられる。が、私は残念ながら水が濁っているため水の中のカバを見たことがない。
カバはまき糞で有名である。自己防衛と威嚇のために糞をまき散らす。それでなくても大量の草などを食べて大量の排泄をする。すべて水の中。たいていの動物園では水がそのために濁り、臭う。糞尿と共にカバはくらしている。
この施設はそれを克服しているようだ。どうしているのか聞きそびれたが、その設備と努力に工夫があるのだろう。
(3)カバ館内部展示物
この展示物が手作りで、暖かみがあり、好感が持てる。紹介してみる。
この旭山動物園の歴史と関係づけてカバを取りあげておられるのは慧眼だとと思う。系図を見れば分かるが、ゴンとザブコの間に11頭生まれたが、無事育ったカバは珍しく、現在生きているのは2頭である。長崎バイオパークへ移動しているムーミンは4歳で死んでいる。韓国に渡ったメスのその後は後で書く。最後の子がナミコ。ナミコは王子動物園で、2回流産した後、2009年メスのナナミ(2011鹿児島市平川動物公園へ)と2012年オスの出目太(2013長崎バイオパークへ)の2頭を出産しており元気だ。旭山のカバの血筋を受け継いでいるのはその3頭ということになる。
(4)「だからカバの話」に出てくる旭山動物園のカバ
「だからカバの話」(宮嶋康彦著・朝日文庫・1999)という本は私のカバに関する知識の源泉になっている本である。最近はインターネットで検索すれば、動物園のカバの移動の様子も調べられることが多い。宮嶋氏のこの著作はインターネットがまだ発達してないときに、足でかせいで日本のカバの家系図を調べ完成させ、日本におけるカバの歴史(飼育残酷史といえるかもしれない)を書き上げておられる。本来カバという動物はどういう動物なのかを明らかにし、そのつきあい方を指摘しておられる好著である。
その宮嶋さんの本の中で旭川動物園のカバはどのように書かれているかというと…。
あやまちは札幌でも旭川でも起こっている。 「この子はまちがいで生まれたんよね。冬は日光浴をさせるんだけど、まさか雪の上ではやらんだろうと思ったんだけど、雪の上でやっちゃんたんだよね、まいったさ」 こう言うのは旭川動物園の獣医、小菅正夫さんだ。 旭川動物園のメス、ザブコは重吉・福子(名古屋東山動物園のカバ夫婦・19頭の子をなし、孫ひ孫等々その子孫は日本にいるカバの半数を占めている)の五番目の子どもだ。(略)そんな季節の晴れ晴れとした気配のなかで、カバ夫妻は帯広と同じように、園内別居を強いられていた。あやまちが起こらないように、オスのゴンは室内に隔離されているのだった。表皮は乾いてカサカサした感じがした。ひび割れした皮膚に血がにじんでいる。この旭山動物園も、冬期は閉園となる。極寒の動物園でアフリカの動物をながめるのは、ちょっと辛い。(略) ところで、旭川で「まちがって生まれた」メスのカバは、帯広のケースと同じように、韓国に渡っていった。1991年(平成3年)8月のことだった。このときは、札幌のオスの子カバとペアになって、全州市の動物園に寄贈されたのである。いわゆる親善大使としての大役をになっての韓国行きとなったのである。が、二頭は重吉・福子の血縁であった。 |
(5)旭山のカバ「百吉」
重吉・福子の第五子ザブコが2013年亡くなって、今旭山には百吉という三才のオスがいる。この百吉の母「モモ」は絵本にもなった有名なカバである。
「カバのモモがママになった」という絵本は2002年に発売された。こんなあらすじである。
「本当にあった動物のお話しシリーズ。長崎バイオパークのかばモモは陸上出産して母親から授乳してもらえませんでした。人口授乳してもらったため泳げません。そのモモがモモタロウを出産するまでのお話」
長崎バイオパークのHPを見ると百吉のことも出てくる。何よりびっくりしたのは、旭川動物園から王子動物園へ行ったナミコの子出目太は、百吉より1才若いのだが、何と百吉の母親モモの夫として移動していったのだそうだ。年齢差18才。モモの年齢に適したオスカバが国内で見つからなかったと飼育日記にあった。
現在国内に何頭のカバがいるのか正確には分からないが、こういうつがいにすることを仲介する動物商がいる。カバの産児制限問題と繁殖計画は人間の都合である。
カバはいくつになったら成獣になったと言えるのか分からないのだが、小さいなと思った。もっと大きくなったらメスとペアリングして二頭になるのだろう。百吉の兄姉たちがいい名前つけてもらっているのだなと思う。とにかく壁にへばりついて時々顔を出す程度なので全身を見ることも写真を撮ることも出来ず上のものが精一杯であった。次回行くときは午後からにしたい。
(6)坪内稔典著「カバに会う」で出てくる旭山動物園ザブコ
私がおもしろがっているカバの本2冊目。俳人で大学教授の坪内稔典著「カバに会う 日本全国河馬めぐり」(2008岩波書店より。日本中のカバに会いに行かれたということが羨ましい。
・水中の河馬が燃えます牡丹雪
・春を寝る破れかぶれのように河馬
・桜散るあなたも河馬になりなさい
これらの句は坪内稔典氏が王子動物園で詠まれた句である。
この本に坪内さんが2006年8月に訪問された頃のカバの様子が書かれているので書いておく。この頃すでに旭山はマスコミに大きく取りあげられていた。TVも映画もマスコミあげて旭山は話題になっていた。
この動物園は山の斜面にある。斜面の高いところに総合動物舎という建物があり、そこにキリン、ゾウ、サイ、カバがいる。 カバ舎のプールにはザブコが沈んでいた。名古屋の東山動物園で生まれた42歳のメスだ。人間で言えば八十歳くらいに相当する。ザブコはこの動物園が開館したときからおり、夫のゴンとの間に十一頭の子をなしたという。ゴンは神戸の王子動物園生まれだ。ちなみに、彼らの十一番目の子のナミコは2003年に王子動物園に嫁いでいる。 ザブコは依然として沈んでいる。隣にキリンがいて柵越しにのぞくが気にするようすもない。時折、耳をぷるっと振って水を弾く。 実は、カバを見に来る人は少ない。しかも、その見物の人々は多少疲れたようすだ。下の方にあったペンギン館の見物などでエネルギーを使い果たしたのだろう。(略) 今、日本でもっともトレンディな場所といってよい旭山動物園だが、カバに関する限りはごく普通である。これって、まだカバにまで展示の工夫が及んでいない、ということであろうか。 ともあれ、カバ舎の周辺はやや疲れた表情の人々がたむろしている。私の横に座った婦人はうとうとしている。斜面に置かれたベンチは傾斜しているので、うとうとしながらずり落ちて行く感じ。時々、風が来てハルニレの梢を揺する。(後略) |
何ともゆっくり時間が流れている。あの人・人・人の旭山動物園でである。今カバ館は上に書いたように見せ場いっぱいのものに変わった。きっと午後1時から人が集まってくるのだろう。「ずり落ちそうなベンチ」は近くにない。場所も入口近くになった。
私が見たカバさんの中で一番印象深かったのは名古屋東山動物園の二代目重吉の動きであった。大きなプールを俊敏な動きで走り回っていた。野生を感じた。「カールルイスより速い」という走りも見てみたい。そういう動物園は出来ないのだろうか。
(7)旭山動物園のカバグッズ
私は二つ買ってきた。一つは缶バッジ、210円。もう一つはTシャツ「誰?Who am I?」シリーズカバ編で2900円。クッキーもあったらしいが気がつかなかった。
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