木喰さんを訪ねる旅(15) |
|
(1)十一面観音
(94.5cm)
社宮寺の木喰さんは、毎月地区の方々がお集まりになり法要をしておられる今も信仰が生きている仏様です。普段は収蔵庫に入っておられるのですが、今は無住になっている本堂に移座していただき拝ませていただきました。本堂は暖房をして下さっていて、5,6人の方々が出迎えてくださいました。
私が抱いているのは収蔵庫に戻すときに写真を撮っていただいたからです。木喰さんを初めて抱かせていただきました。感激いたしました。
十一面観音と言えば、頭部を取り巻くようにお顔が配置されるのですが、木喰は後ろに化仏を作る気はさらさらないようで、前面に10面(下段5面、中段4面、頂上面1)配しています。化仏の表情は軟らかく微笑みを感じますが、正面のお顔は、ほお骨が強調され面長で厳しさを感じる木喰には珍しい象です。 水瓶を両手に持っているというのも木喰以外に例がないと思います。天衣が巻き付く様を丁寧に彫っています。 台座は、一番下が反花(かえりばな)、その上に敷茄子(しきなす)、その上に蓮座の三段です。一木で台座も作る木喰ですが、この像は敷茄子と蓮座の間で切れていて、ほぞ穴が台座にあり、蓮座の底部にほぞが作られています。 頭から背中、足までまっすぐ一本の線が入っています。背割りではないかと思われます。台座には「かすがい」が打ち込まれていました。 背銘です。 天明六年四月八日 慈眼(目示)衆生 (梵字) 「サ」(聖観音)「オンアロリキャソワカ」(聖観音真言)日本廻国三界無住無佛 福集海無量 作 木食行道(花押) 天明六年(1786)四月八日は、「木喰さんを訪ねる旅14」で取りあげた茅野市富士見町乙事法隆寺観音堂で普賢菩薩を彫る6日前です。この像を彫った後、向かったと思われます。移動含めて6日で彫り上げるというのはすごい。 慈眼(目示)衆生とは慈しみの眼を持って衆生を見守ると言う意味。福集海無量は福を集めること、海のように限りがないという観音菩薩の徳を書いています。 茅野市の説明ではこの造像の時木喰59歳とありますが、彼は途中で年令を10歳引き上げます。また名前も木食から木喰に変えます。その辺の事情については「木喰さんを訪ねる旅」に書きましたのでご覧ください。 |