木喰さんを
訪ねる旅(21)
成信坊
(津島市本町)
 この付近を訪ねるのは3回目です。津島地蔵堂に円空の千体地蔵菩薩があります。それを見たくて津島を訪ねたとき、この付近へ来ていたことが今回の訪問で分かりました。津島祭のDVDを見た観光案内所も、地蔵堂も成信坊のすぐ近くにありました。
 今回は、2018年6月17日(日)~18日(月)全国木喰研究会の名古屋ツアーでの訪問です。
 成信坊は浄土真宗の寺で信長の時代からの歴史を誇る寺。境内に臼を踏み石にした道があり「ひき臼寺」とも呼ばれているそうです。 

薬師如来像

 ご覧のように大変立派な塗りの厨子に入っておられます。この像は明治時代にはここへ移座されてきていたと聞きました。もともとは木喰がふるさとである現山梨県南巨摩郡身延町古関前畑に造った四国堂にあった薬師如来像のようです。四国堂にあった像は現在全国各地に散らばっています。後年円空が訪ねた京都南丹市八木町蔭涼寺の薬師如来像もこの像と同じく髪の長い女人のような像容にしています。木喰さんは病やケガを癒す仏は女性の神のイメージだったのだろかなと想像しました。
 頭光光背には円形に光明真言が書かれています。
 写真左、光背側面左肩に『二十三』の文字が見えます。四国八十八ヶ所霊場の像を祀る「四国堂」ですから二十三番札所が気になります。二十三番は徳島県最後の札所、薬王寺。温泉街の中の寺。開基は行基。本尊は厄除薬師如来。薬王院から二十四番の高知の最御崎寺まで75km、歩けば22時間かかるという私には印象深い札所です。
   木喰は筆まめで、背面に丁寧に情報を書き残しています。この背面の梵字や漢字についての解説が講師の小島梯次木喰研究会評議員の資料に丁寧に書いてありましたのでそれを引用させてもらいます。
 
光背裏。真ん中に薬師如来の種字「バイ」、その周りを薬師如来の真言「コ ロ コロ センダ リ マ トウ ギ ソワ カ」が書いてあります。この真言四国札所巡りしているとき楽しくて覚えました。
 
首から下と蓮座、臼座の背面文字です。
 
五行にわたって文字が書かれています。
 
右1…日本千タイノ内 *3正作
 
右2…*2聖朝安穏増寶壽 百万歳(年?)
 
中央…薬師如来 天一自在法門 木喰 八四歳(才)
 
左2…*2天下安楽興正法 五行菩薩(花押)
 
左1…*1寛政十三酉五月十日ニ


*1寛政13(1801)年2月5日に享和に改元されている。改元されても徹底するのに時間がかかった時代だったのか。
*2この文句は「仏説阿弥陀経」の一節。薬師如来に阿弥陀経?と思うがありがたいお経の一節というぐらいのことだったのだろうか。
*3正作ってどういう意味だろう?正しく作っただうか?ということは多少自信のない作もあるということか?
 手の形が気になった。左上へ伸びているのは右手人差し指のようである。一番前にあるのは左手親指か。自分でやってみたが、人差し指は長すぎる。こんな風にできない。何とも不思議な手である。薬壺は持っているのではなくのっているようだ。
 このお寺の石臼を使った参道は美しいものでした。
 また木喰さんを拝観させていただいたお部屋の軸「阿弥陀二十五菩薩来迎図」は見事でありがたい気持ちになりました。ご紹介します。襖や衝立の絵も素敵でした。
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