円空さんを訪ねる旅(14)
円空自刻像(神明神社蔵) |
関市弥勒寺・関市円空館
(岐阜県関市池尻185 рO575−24−2255)
円空さんの生誕地は諸説あるが、没した場所についてはここ関市池尻であることで一致している。
生誕年については、昭和45年(1970)に確定した。円空50歳の時(1681)に群馬県富岡市貫前(めきさき)神社で大般若経を見終え、その奥書に「壬申年生美濃国円空」と書き残していることから、寛永9年(1632)年であることが判明した。
晩年、58歳の時(1689)に園城寺尊栄から血脈を受け、弥勒寺は三井寺の末寺に加えられる。この地を自らの入定地と定めた円空は、元禄八年(1695)7月13日、弟子の円長に血脈を与え、7月15日、長良川河畔で入定し、64年の生涯を終えた。現在、弥勒寺周辺に、「円空入定塚」「円空の墓」「関市円空館」などがある。
関市円空館のパンフによると、関市の円空仏は、294体ほど。神社・寺など52カ所に192体、個人70戸に102体だそうである。地域別では関地域168体、上之保地域55体、洞戸地域37体、武儀地域21体、板取地域7体、武芸川地域6体だそうである。
弥勒寺とその周辺
(1)弥勒寺
弥勒寺は、飛鳥時代七堂伽藍を備えた大寺院であったようだ。またそれにつながるように武儀郡の役所跡や祭祀場跡などが発掘されていて、この辺りの豪族ムゲツ氏の拠点のあった場所であることが発掘調査で確認されている。
弥勒寺には数百体の円空仏と円空画像もあったそうだが、大正9年(1920)の火災で焼失してしまい、現在、阿弥陀如来、聖観音、不動明王、秋葉神の4体が残されている。関市円空館に聖観音像が出品されていた。
この本堂は最近建てられたもののようで、本堂内に平成の円空彫りが多数並べられていた。大きいもの小さいもの30〜40体あっただろうか。本堂は「どうぞご自由にお入り下さい」とあった。
(2)円空の墓と入定塚
円空の墓 | 円空入定塚 |
円空の墓は、弥勒寺前の駐車場から山裾沿いの関市円空館までの道にあった。ちょっと左に腰をひねったような墓石に元禄八年などの文字がある。
左の入定塚は最近立てられたようである。これは、鮎之瀬橋のすぐ東、弥勒寺へ向かう三叉路辺りにあり、すぐ近くを長良川が流れている。古くから入定地の噂のあった場所に石碑を建てたと言うことなのであろう。
さて、はたしてどちらに円空さんは眠っておられるのか。
(3)関市円空館
円空館へ着いた途端大雨。
展示は大きく二つにわけられる。一つは円空関係展示品もう一つは郡衙関係展示品。
円空関係展示品中の円空仏は、常設展示と期間展示のものがある。常設展示の円空仏18体は池尻白山神社所有の16体と関市所有の2体。期間展示のものは、4ヶ月に一回入れ替えられる。今回第19回期間展示の円空さんは、宝泉寺の不動明王、藤谷自治会の聖観音や護法神、個人蔵の青面金剛神など。
「すみません。写真撮影は禁止ですか?」
と聞きましたら、
「個人で記念にとられるのならいいですよ。」とのこと。
これは、ありがたいと思って中へ入ったのですが、「写真撮影禁止」という掲示が各所にあります。許可を得ているのですから堂々と撮ったらよかったのですが、私以外の参観者に気兼ねして(「あれ?撮影禁止なのに」と思われたくない)結局撮りませんでした。
あれ?円空自刻像がない…と思いました。
「今回は、神明神社のものは出品されていない。次回は出品されるのだが」
と言うことであった。
「神明神社へ行けば、拝見できるのですか」
「いいえ。総代の方3名が相談して承諾して、立ち会いの上で鍵を開けなければならないので、『拝観料が一万円だ』というようなことになるというので、この円空館も立てられたのです」
やっぱりなあ、円空さんを見せてもらおうと思ったら、特別な理由や肩書きがないと簡単なことではないのだろうなと思いました。
旧関市にある円空仏168体を紹介したような資料がないかと聞いてみた。
「貧乏な美術館なのでありません。」
とのこと。
関市円空館には、今までに出版された色々な円空関係書籍が手に取ることができた。
関市が発行している書籍2冊を買ってきた。
英語版『円空』(平成14年・関市・長谷川公茂等著)と『ふるさと再発見』(平成14年発行・関市教育委員会・松原久男著)を買ってきた。
関市の円空さんのことをインターネットで調べていたら、関市立緑ヶ丘中学校のHPに多数の写真があった。
関市は大合併で周辺の町村を編入した。編入した上之保地域に鳥屋市不動堂がある。鳥屋市不動堂の円空仏21体が平成17年6月9日に盗難にあったそうだ。けしからん!としか言いようがないのだが、伝・尼僧像(こんがら童子像)は円空仏の中でも有名なものである。今どこに隠されているのかと思う。被害総額は1億円という記事を読んだ。
大切にお守りしてこられてきた方々の悲しみはいかばかりかと思う。一日も早く犯人が捕まり、返還されるようにと願う。
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