円空さんを訪ねる旅(26)
尾張荒子観音寺
(名古屋市中川区荒子町字宮窓138 рO52−361−1778)
私は、新幹線に乗らずに新快速を乗り継いで名古屋まで行くことにしました。京都から米原まで湖東を約一時間、そして東海道線を名古屋まで一時間二十分。自宅を出発しておよそ二時間四十分で名古屋駅到着。料金は2520円。時間は三倍料金は半額。それほど急ぎの旅ではありませんから、これで十分です。行きは「円空研究1」(円空学会発行・人間の科学社刊・3500円)を読みながら、帰りは「荒子観音の円空仏(改訂版)」(行動と文化研究会・小島梯次500円)など読みながら帰ってきました。ゆっくり読書しながらの旅もなかなかいいものです。
名古屋から地下鉄東山線に乗ります。東山動物園とは反対方向の高畑行きの終点まで。約10分で料金は230円。地下鉄の駅からは案内板がお寺まで連れて行ってくれます。
今日のお目当ては荒子観音寺。正式なお寺の名前は「浄海山円龍院観音寺」というようです。
尾張四観音の一つに数えられているようです。尾張四観音というのはこの荒子観音寺と竜泉寺、笠寺、甚目寺の四か寺。竜泉寺も円空さんと縁の寺です。
1254体の円空仏があるというお寺です。
私が今までこつこつと訪ねたお寺で出会った円空さん全部会わせてもその数に届かないのではないでしょうか。とにかく円空さんを訪ねる旅の中でも超大物のお寺です。
(1)1254体の円空仏!荒子観音寺
現在までに発見されている円空仏が約5200体。そのうちの四分の一を有する寺…というだけで「円空研究1」で写真特集「荒子観音」があるわけが分かろうというものです。私は円空さんは美濃の方ですから当然美濃飛騨辺りに円空さんがたくさんおられると思っていたのですが、予想に反して円空さんが一番多くおられるのは尾張なのです。何れは訪ねたいと思っている竜泉寺そして津島地蔵堂そしてここ荒子観音寺に千体を越える円空仏がおられるのです。
円空研究にとって質、量ともに圧倒的な存在感を示しているのが荒子観音寺です。
(2)3m越える仁王さん
仁王門に阿吽二体の仁王さん、何れも3mを越える像です。
ところがこれが見にくい。前に格子戸があり、透明のプラスチック板がはまっています。この格子が細かいのです。そしてプラスチック板に光が反射して中が見えにくいのです。何とかならないものかと色々工夫して見ようとしたのですが乱射が邪魔したり、格子が邪魔したり。カメラで顔をと思いましたが、カメラの口径が合わず(格子が細かすぎて)撮れません。記念に格子戸とお腹の辺りの写真を腹立てながら撮りました。肉眼で見るのも難しいのですからカメラどころではないのです。
正直な感想です。私円空さんの大ファンですが、大きな仁王さんは下手くそで魅力がないと思います。千光寺の立木仁王の時も「こんな下手くそな仁王さん見たことない」と思いました。今回も何だこれは…と思いました。筋肉の躍動感はありませんし、表情もパッとしませんし頭髪のボリュームもないし、腹は出っ張って病人みたいだし、まあバランスが悪いことこの上ないものです。阿吽とも右手がひどいと思います。
この二体の仁王さんを彫った余材で他の像を彫ったそうです。が、少なくとも柿本人麻呂像他一体は材の種類が違うそうですから、これもどこまで本当のことなのでしょうか。
(3)本堂と客殿に円空仏
第二土曜日の1時から4時まで公開されています。私は12時過ぎにお寺について、まず仁王門で悪戦苦闘して続いて本堂へ進みました。
荒子観音寺は聖武天皇の時代(天平)に泰澄が開基したそうです。白山信仰をはじめた泰澄、そしてそれを信じる円空ですからこの寺に円空が滞在したのは必然なのでしょう。本殿の本尊は泰澄作と言われる聖観音像だそうです。33年に一度御開帳があるそうです。梅原猛「歓喜する円空」によると、小浜の羽賀寺の十一面観音に似ているとか。
この本殿で手を合わせていたら、親切な方が「円空さんの見学ですか」と声をかけてくださいました。「1時からですからもう少し待って下さい。あちらが入り口です。」と指さして教えて下さいました。「客殿の方は写真厳禁ですけど、この本殿の中に円空さんがおられます、写真も撮れますよ。」とのことでした。ありがたく写真を撮らせていただきました。
この二体は荒子観音寺の円空さんの中でも、5番目(釈迦如来像)6番目(大黒天像)に大きな像です。
釈迦如来像(125.4cm) | 大黒天像(104.3cm) |
あとから客殿の円空さんと対面して思ったのですが、本殿のこの二体は大きすぎて客殿内陣に入りきらないのでここに安置されているのではないかと思いました。もともと荒子観音寺の円空仏は境内色々なお堂や塔に祀られていたようです。今はそれが客殿内陣に集められているということのようです。
(4)最近発見という鹿島大明神のこと
「荒子観音の円空仏(改訂版)」(行動と文化研究会・小島梯次500円H20再々刊)を買って帰りのJRで読みながら帰ってきたことを書きました。家に帰って調べたら、平成17年の再刊本を既に買っていたことが分かりました。それで少し気になったことがあったので二冊を比べてみました。
それは今年2009年5月23日中日新聞に載った「荒子で新たな円空仏」「神明社のほこらから」「高さ39.2cm1676年ころ製作か」という記事にある鹿島大明神のことでした。この記事によると小島さんが円空さんに間違いないと太鼓判を押されたようです。神明社は荒子観音寺のすぐ隣にある神社です。
ここに鹿島大明神像があることは、前から知られていたようです。小島さんはこのように書かれています。
「かっては同寺境内で、いまは隣接する神明社内に、円空の「鹿島大明神」銘のある像が祀られていることを、日置即全師が証言されている。」
知っている人はすでに知っていたということのようです。それが公開されたのが今年の5月23日であったということのようです。
荒子観音寺の円空仏のすごさをもっと紹介したいのですが、写真が撮れませんませんでした。一体一体それぞれに魅力的でゆっくり写真が撮れたらどんなにいいだろうと思いながら見せていただきました。スケッチしてとも思ったのですが、いつまでたっても描けそうもないのでこれでUPすることにします。
このお寺には、観音菩薩(羊龍)、護法神、不動明王(火焔つき)、愛染明王、雨宝童子、慈恵大師像、柿本人麿、宇賀神、歓喜天(秘仏)等々があり、昭和50年4月29日に毎日新聞でスクープされた千面菩薩1020体や千体仏、木端仏31体などなど、もうすごいとしかいいようがありません。
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