円空さんを訪ねる旅(7)

美並ふるさと館
岐阜県郡上市美並町粥川(星宮神社境内)TEL:0575-79-3440

星宮神社

 美並ふるさと館へナビが連れて行ってくれました。ついてビックリうれしい気持ちになりました。ここは、星宮神社のある場所だったのです。このロマンチックな名前の神社は、円空との関係の深いところです。その別当寺である粥川寺には、円空自筆の修法書や経文の写しなどが残されています。この神社の前にある「ふくべ」という食堂なかなか美味しい料理を安く提供してくれます。ちょっと脱線しました。
 美並町で円空の造仏活動を支援したのは、この星宮神社神官西神頭(にしごとう)家の安永(兄)か、安高(弟)であったようです。西神頭家は、奈良時代美濃の洲原神社を建立させた白山信仰の創始者『泰澄(たいちょう)につながる家系。円空の造仏に白山信仰が色濃く影響を与えているのは、西神頭安永(もしくは安高)の影響であろうということです。西神頭家はこの辺り一帯の神社の神官だったようで、星宮神社はそのうちの一つだったのです。なお、美並町には158体円空仏が残されているそうです。
 
 寛文6年(1666)に「江州伊吹山平等岩僧内」と北海道有珠善光寺の観音像に刻んだ円空は、寛文3年(1663)にこの美並で初めて神像を彫ったと言われています。寛文3年から5年までの円空の作像を極初期像と言い、美並町に28体、関市に5体、岐阜市に5体、そして三重県に2体現在発見(『円空展』カタログより長谷川公茂)されているそうである。圧倒的に美並町に多いのです。美並町で円空が造仏する動機になることがあったと予想できます。西神頭家の当主が自分の所管する神社に神像を造らせたと考えるのが妥当であろうと思われます。(なお、美並町の『美並村の円空仏』には極初期像前の円空仏を9体紹介している)

美並ふるさと館

  円空ふるさと館では90体あまりの円空仏の展示や円空の生涯をパネルなどで紹介しています。なにしろ、ここでは、円空の生誕地はここだ!という主張をしておられます。木地師の子として生まれた円空が、32歳の時に粥川寺で得度したというのがその主張です。これは故五来重氏や池田勇次氏が唱えています。それに対して梅原猛氏や長谷川公茂氏(円空学会会長)らは、岐阜羽島生誕地説で、母を洪水で失った「まつばり子(私生児)」であるというのが、その主張です。
 ここも、写真厳禁でした。仕方ありません。そのパンフレットとここで買った本を紹介します。

西神頭家蔵『八面荒神』

その極初期像の中に『八面荒神』を見つけました。この八面荒神は西神頭家所蔵で全高26.3cm。大変細かく彫られています。初期像にあるつり上がった目をしています。お世話になった西神頭家の念持仏として作ったのでしょうか。この表情は円空の中でずっと引きずっていく表情のように私は思いました。円空仏は微笑をたたえている優しい表情だというのですが、必ずしもそうでもなくて、私は写真でしか知らないが荒子観音寺の『愛染明王像』はそっくりの表情をしている。延宝四年(1676)の作だから美並でこの像を造ってから13年後の作である。延宝の諸像は円空の仏像の中でも円空らしいと言えば一番円空らしいと言える仏だと私は感じているのだが。

自照庵(三日市)薬師如来(善女竜王) 

 ふるさと館にたくさんある円空さんの中で私はこの薬師如来に惹き付けられました。像高85cm。柔和な表情の仏さんです。
 薬壺を持っています。この顔この作りは、よくある円空の薬師像に違いありません。 「この像のどこが善女竜神?」と思いました。私がこの像を描いた時、薬師さんの向かって左側の光背部分が何の表現なのか分からないまま描いていました。しかし善女竜王とも呼ばれていると聞いてからもう一度よく見たら、龍を頭に巻いてているのです。
 何でも、この円空さんは、子どもたちが浮き輪代わりにして川で遊んでいた仏だというのです。美並町で平成円空彫をしておられる加藤昭秀さんは、この仏さんのおかげで確かに三日市は水難事故がなかったと言っておられました。
 ふるさと館には、この他写真で紹介できないのが残念ですが、洞泉寺「庚申」、秋葉大権現〔『美並町の円空仏』表紙の写真)、宇賀神(ヘビの神様『美並村と円空』表紙写真)などがありました。
 ところで、ここの受付で本を買おうとしたら、「どこから来たのか」と尋ねられました。「京都から」と申しますと、「彫りたいと思っているのか」と聞かれました。「何で分かるの?」と思いましたが、「はあ、少しはじめたのですが…」と申しますと、「彫っている名人を紹介してあげよう」と親切に電話をかけてくださいました。この建物の中に、ここで買った本の作者の池田勇次さんもおられるということでした。親切に名人を紹介してくださった方は地図も詳しく教えて下さったので、私はこのあと、その円空彫りの名人『加藤昭秀』さんを訪ねることになりました。
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