円空さんを訪ねる旅(31)

音楽寺
(愛知県江南市村久野)

 前日(2010・6・13)一宮市博物館の特別展『円空展』へ行った私は,音楽寺の十二神将や荒神が出展されていないことに「なぜ?」と思いました。一宮市周辺の円空さんというなら音楽寺を外さないだろうと私は思ったのです。ちょうどギャラリートークが行われた日でしたから,学芸員の池田和彦さんに聞いてみました。
「今ちょうどあじさい祭をしておられて,円空さんを展示しておられるので出展してもらえなかった」
というお答え。
「ということは,今音楽寺へ行ったら拝観させてもらえるということですね」
とねんをおしましたら
「そうですね。6月末までしておられますね」
と言う返事。
(ようし、明日行こう!)
という思いがけない経過があって江南市音楽寺とご縁が結べました。
 翌日(2010・6・14)新幹線で名古屋へ,続いて名鉄で江南へ。ここまではいいのですが,この後の行き方が分かりません。江南というところは名鉄以外には行きようがないようです。
 江南駅で「音楽寺」へ行きたいのだが,何に乗ればいいかと駅員さんに聞いたが,そんなことを聞く人は珍しいようで,地図を出してこられて探しておられた。そして村久野というところだと教えて下さった。
 バスで行けるかというと,村久野を通る路線バスはないとのことであった。比較的近い場所である○○団地行きのバスで行ったらどうかということであった。しかしバス停へ行って調べたが30分は待つ必要があるのでバスはあきらめてタクシーに乗ることにした。「江南へ観光で来る人は多いのですか」「いや藤の季節に…」という会話を運転手さんとした。「音楽寺のあじさい祭はにぎやかなのですか」と聞くと「カラオケが好きならなんぼでも歌える」とおっしゃっていた。1320円で音楽寺に着いた。
 境内からどなたか女性が演歌を歌う声が聞こえてきた。初めて聞くメロディだった。カラオケ大会をしておられるのかと思って近づいていった。本堂の前に舞台その前にテントが張られていて客席が作られていた。観客はほとんどおられないようで役員さんのような方たちが歌い座っておられた。
 私は『円空さんは…」と探すことにした。円空展という看板が目に飛び込んできた。どうもあの建物のようだ。私は写真を撮りながらそっちへ向かった。

 村国の郷(村久野区歴史資料館)の円空さん

 これは境内の円空仏が紹介してある掲示板にあった写真である。
 この資料館には16体の円空さんがおられる。
 薬師如来と日光菩薩月光菩薩、そしてそれを護る十二神将。それをまた護る荒神と大護法善神。
 但し十二神将の中の戌(いぬ)像が欠けている。ところが戌像は安城市東端町長福寺が見つかっているとのことで資料館にそのレプリカもありました。
 私は円空の十二神将を大垣報恩寺で見たことがある。「円空研究3」に尾張地方の十二神将が三種類(鉈薬師・正覚寺・音楽寺)が並べて紹介してある。それらを見ながらつくづく思うのだが、円空の十二神将はそれぞれオリジナリティに溢れている。
 まず、鉈薬師のものは文様風のものを多く彫りだしている。大変丁寧な彫り方が印象的であり、十二支の動物を生かすだけ生かしている。人物と言うより動物的というか私は爬虫類的な表情をしており、かなり気色悪い。
 正覚寺のものはかなり形式的である。渦巻き模様を多用しており、額に漢字で十二支を彫り違いを表現しており、手は布のしたにあるあの円空独特の彫り方である。口が耳まで裂けているのではないかと思うぐらい大きくかなり異形である。
 ここ音楽寺のものはかなりまともな感じがする。私は哲学的な印象を持った。十二体ともそれぞれが彫りの深い目をしており、人間的である。
 薬師三尊は穏やかで優しい目をしておられる。
 大護法善神は好々爺というイメージである。
 ところが荒神はかなり印象が違う。何とも異様である。丸太を最小限の彫りで荒神にしてしまっている。具象ではなく極めて抽象的な荒神を彫ったのではないかと私は思った。
  
 音楽寺荒神  音楽寺大護法善神

音楽寺薬師堂と村国の郷(歴史資料館)

 左の写真の右にあるのが現在円空仏他の資料が展示されている歴史資料館です。年に一度あじさい祭りと共に開かれるようです。
 そして真ん中が円空仏があった薬師堂です。左はその縁の下です。音楽寺の円空さんはこの薬師堂の本尊だったわけではなく、他に置いておくところがなかったのか、縁の下に固めて置いてあったらしいのです。きっと下手くそな仏たちだというので捨て置かれたのでしょうね。

2011・1・2(日)作成

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