円空さんを訪ねる旅(16)

飛騨国府清峯寺
(岐阜県高山市国府町鶴巣1320-2:事前連絡0577-72-3362(舩坂秀雄氏宅))

円空の最高傑作!清峯寺十一面千手観音三尊像

 
 いくつかの本を見ているうちに、清峯寺へ行きたいという気持ちがどんどん高まってきました。
 春に千光寺など奥飛騨を巡った時、国府町へも足を伸ばしたのです。その時に国府郷土資料館を検索して行ったら、そこは国宝の建物のある場所でした。倉庫があるのですが、教育委員会へ電話しないことには開けていただけないものでした。時間がないの国府の円空さんは諦めることにしました。
 今回は、上記の連絡先へも電話しましたので大丈夫です、道さえ間違わなければ。
 清峯寺とおぼしき所に着きました。もう一度船坂さんへ電話しました。「清峯寺円空堂の前で待ってくれ」ということですので、階段を上って行きました。あれ?ここは白山神社です。白山神社なら円空にふさわしいなあと思いながら近づいていくと、円空堂とその説明板がありました。それを読んでいると、船坂さんが軽トラでそこまで登って来て下さいました。
重要文化財(昭和34年11月16日指定)
円空作仏像(聖・千手・龍頭)
国府町観光協会
 円空は江戸時代前期の僧で諸国を遍歴し。その彫刻を通して庶民の教化に勤めた。かれは室町時代以後、皮相な自然観に陥ってきたわが国彫刻の世界に、独自の天才を発揮し、偉大な間の力をしめしてきた聖者である。 山嶽宗教に徹した円空は、つねに山間へき地を巡礼し、人々の幸福を願い多くの仏像を彫刻して、末永く人の世をうるおしている。
 したがって円空の彫刻はそれ自身個性的であり、端的に、強くまた烈しくその真髄を表現し、仏教と芸術の世界に生きぬいている。
 しかし円空は、教土の文化人長谷川庄五郎にも富田礼彦にも理解されなかったが、加藤歩○の蘭学遺稿によると、京都の画家三態思考が千光寺に来遊した際、かれの彫った立木の仁王を写し帰り、伴蒿蹊に話してその価値を認め、畸人伝に載せたといわれている。
 今日ようやくその隠れた力作が各地に発見され、その芸術の高さと感動の深さが、新しく見直された。
 清峯寺の円空作三体は、元禄のころ清峯寺が字寺山谷にあったころ円空上人がこの地に滞在し、桧材に一刀彫したものと伝え、その代表的名作ともいうべきものである。
 昭和四十年には十二万六千余円を費やして修理を施し、はるばる海を渡って西ドイツの博覧会へ出品されたこともある。
 昭和三十四年十一月十六日、三体とも県指定の重要文化財となった。
               

いよいよ、円空堂の扉が開きました。
うわあ…これか…。
何と立派な…。
私が今まで拝見してきた円空さんの中でこの三体は最高傑作だと思いました。

(1)十一面千手観世音菩薩

 中尊である十一面千手観音です。円空の十一面観音は多くあります。円空の信じる白山信仰の本地仏である十一面観音は多くありますが、千手観音はこの仏と栃木県鹿沼市広済寺にあるもの以外私は知りません。
 注目されるのは、足許にある地蔵菩薩像です。自刻像ではないかとも言われています。梅原猛先生は地蔵菩薩は白山十禅師である泰澄であろうと書いておられます。つまりこの仏像は白山信仰そのものを表しているというのです。

(2)龍頭観世音菩薩(善女龍王)

 この龍は何と見事な龍でありましょうか。それを頭に置き大変スリムな観音菩薩です。このあと聖観音菩薩(善財童子)があるのですが、これも引き締まった表現をしています。円空の作品は相対的に手が窮屈です。細かい表現をしていたら時間がかかり過ぎて自分らしい表現ができないと彼は考えたのだと思います。手を衣の中に隠すこの方法は素晴らしと私はかねがね思っています。
 そしてこのスリムな体の表現を私は法隆寺の百済観音と同じだと思います。高賀神社円空館にある三尊像もスリムですが、あれはやや不自然です。この清峯寺のものはすべてがほどよく美しいと私は思います。

(3)聖観世音菩薩像(善財童子)

 この善財童子も大変スマートである。円空の善財童子は様々な姿をしている。僧形をしていることもあれば、尼僧のように見える時もある。この善財童子の顔はおもしろい。目と眉は憤怒している。しかし、口元は何か微笑んでいるように見える。三尊として並べた時、他の二体の穏やかさに合わせたのかも知れない。顔の上部に目鼻口を上げて、変化がついているのも楽しい。この目は何を見据えているのだろうか。見開いている、にもかかわらず瞳がない。頭髪の表現も大変オシャレである
 お世話下さっている船坂さんは、電話があればかけつけてくださる。白山神社にも電話番号が書いてあった。つまり飛び込みの人もいるということである。
 私が行った8月9日(土)の前日大阪から予約電話が入ったのに来なかったとおっしゃっていた。前任者がお亡くなりになってこのお世話をしておられるそうである。こういう電話待ちのお世話は大変だろうなと思った。拝観料は200円。写真料が500円。私が写真を買おうとしたら、「自分で撮ったらいい」とおっしゃった。もちろん写真は撮りたいが、申し訳なくて写真も買った。
 清峯寺は以前は塔頭もあるような大寺院であったらしい。京のお公家さんの名前も出てくる清峯寺の説明テープを聞かせてもらった。今ある場所は円空がいた清峯寺の場所ではない。白山神社と共に清峯寺がこの場所に移ってきたらしい。白山神社といっしょにあった寺であるから円空も縁をもったのであろう。
 しばらく前は尼僧が清峯寺をまもっておられたらしい。小島梯次さんの『千光寺の円空仏』には尼僧が千光寺へ電話をかけてくれて、「千光寺では、『円空仏を見せてくれなどと言ってはいけない。拝ませてくださいと言いなさい」注意を受けたことが書かれていた。
 そして、ここの円空さんたちを『円空展』などには出品する気持ちがないとおっしゃっていた。拝みたい人はどうぞお越し下さいということらしい。私は円空さんをこんなふうに身近に見せてくださること、しかも写真まで自由に撮らせていただけることが大変うれしい。
 出品しないと言うことは、いつ行っても見せていただけると言うことである。
9時〜5時まで無休だそうである。
 船坂さんに感謝し、また機会があれば訪ねたいと思った。

円空の最高傑作は清峯寺で最高の状態で見せていただける!

2008・8・9(土)撮影
2008・8・15(金)作成

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