円空さんを訪ねる旅(28)

豊田市民芸館
(愛知県豊田市平戸橋町波岩86−100 рO565−45−4039)

 民芸運動に賛同する博物館や民芸館は各地にありますが、自治体が行っているのはここだけではないでしょうか。入館料は無料です。豊田市民芸館に円空さんがおられるということをHP情報で知りました。しかしながら豊田市に円空さんが足を伸ばされたということではないようです。何でもコレクターの方が集められた円空さんを寄贈されたとか。
 龍泉寺から豊田市へナビの命ずるまま行ったものですから、さっぱり主体性のない運転でした。長久手古戦場跡とか愛地球博記念博公園などを通りました。
 五月に東京駒場の日本民芸館へ行ってきました。棟方志功の特別展があったのですがそれほどの感動もなく帰ってきました。大原美術館の中の民芸コーナーの方がよっぽどいいと思いました。それで豊田市民芸館もきっと同じだろうとタカをくくってたのですがなかなかでした。円空さんだけでなく他の展示もなかなかです。
 上の写真が第1民芸館にある円空さんの常設展示です。三重県志摩片田の大般若経の円空さんの絵をバックに円空さんが二十五体おられました。
 ゆっくり拝見することができました。
 この写真左側に比較的大きめの(15cm〜40cmかな)円空さんたち、そして右側には小さい円空さんたちが二十体おられました。

大きめの円空さんたち五体

 尊名をメモするのを忘れましたのでいい加減なことを書くことになると思いますが、上の左から観音・慈恵大師・阿弥陀(観音)。下は左から観音・金剛童子ではないかと思います。

小さい円空さんたち

これは尊名をメモしましたので民芸館の説明の通り尊名を書くことにします。

神像 善女竜王像 愛染明王・荒神像

円空仏の展示について(民芸館の説明より)

 ここ、第一民芸館の開館当初に本多氏が円空仏の展示に行った説明文は次のとおりである。
「この二十数年間の間に、手の届くところに流れて来た円空(1628〜1695)作の仏像をねんごろに、拾い上げている内に三十体近くになった。ここに諸仏25体を阿弥陀来迎図になぞらえて立体的に配置し、僧形の一体を念仏行者として、後ろ向きに置いた。諸仏台座や岩組は、旧日本民芸館の余り材をブロックにして再使用したものである。
 さて、本多氏という方のことが分からなかったのであるが、第1民芸館に置いてあった「豊田市民芸館だより」第7号(2009年7月)で少し分かったのでここに書いておきます。

本多静雄氏のこと

平成20年度新収集資料 本多静雄コレクション
(前略)
本多静雄氏について
 本多静雄(1898〜1999)は愛知県豊田市出身の豊田名誉市民。日本電話施設(株)エフエム愛知の創立など実業家として活躍の一方、陶芸家・加藤唐九郎氏と出会って陶芸に興味をもち、かつては実態がよく知られていなかった猿投山西南麓古窯跡群(猿投窯)について本格的な調査を行い、日本有数の古陶磁研究家・蒐集家としても活躍しました。また円空仏をはじめとする各種民芸品を蒐集して民芸の振興を図るほか、晩年には狂言を執筆して自らこれを演じました。本多氏の関心・関与は茶の湯、古陶磁、民芸、骨董から狂言にいたるまで幅広い分野に及びます。豊田市民芸館や愛知県陶磁資料館の設立運動に関わり、親交のあった画家・杉本健吉氏の杉本美術館初代館長に就任するなど様々な活動を展開しました。
 本多静雄氏からこれまで寄贈された資料は、1482点です。そのうち猿投窯・古陶磁関係が983点、民芸・その他資料は499点です。
 平成20年度、新たに本多静雄コレクションを購入し、受け入れの資料整理を実施しました。
 平成20年度購入分と今までの寄贈分を併せて、この方のコレクションは豊田市民芸館に4721点だそうです。ということは今回約3300点を購入したことになります。いやはやすごいコレクションの持ち主だったことがわかりました。人間国宝の方々の陶磁器を初めすごい高額の一級品を集めておられたようです。おいくらで購入されたのかとまたまたお金のことが気になりました。
 「この二十数年の間に、手の届くところに流れてきた円空作の仏像をねんごろに、拾い上げているうちに三十体近くになった」という言い方を私は金持ちらしい余裕の発言だなと思いました。きっともともとの持ち主は事情があって手放したのでしょう。しかしもともとどこにあったものをどういう経過で手に入れたのかを明らかにするのも円空研究にとっては大切なことでしょう。こういう作品群はそれが明らかにできないという弱点がありそうです。いずれの作品も初めて見るものでした。つまり私の目にした解説書や写真集や図録にはないものだと思います。
 私はこの善女龍王の丁寧な彫りは珍しいなと思いましたし、小さい像の丁寧さを感じました。念仏行者に比しておられる僧形像は、荒子に二体ある慈恵大師像にそっくりだと思いました。金剛童子と私が判断した像は小品ながら上品ないい顔してるなと思いました。
 豊田市民芸館で円空のこと本多静雄氏のこと、コレクターの役割のことなど考えました。

 それにしても、ゆっくり見せていただきました。豊田市民芸館に感謝です。近くなら無料で会いたいときに会いに行けるのになあと思いました。

2009・8・8(土)撮影
2009・8・14(金)作成

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