円空さんを訪ねる旅(18)

下呂市小坂郷土館
(下呂市小坂町湯屋・рO576−62−3610)

下呂市小坂郷土館には円空さんはおられません!小坂町内の円空さんの写真があるだけです。なぜ?…2004年4月盗難にあったからです!

小坂郷土館の円空さん、盗まれました!

詳しくは、下記のHPをご覧下さい。
(1)岐阜新聞web
(2)円空連合/重要なお知らせ
(3)下呂市教育委員会/円空仏盗難
松尾八幡神社薬師如来と二菩薩
 
薬師如来像1体の左右に菩薩像2体が並んで、1対となっています。うち、左右の菩薩像2体が盗難に遭いました。
 この円空仏は神社の祭礼で信仰の対象となっており、円空仏の裏側には墨で文字が書かれています。また、1体は右肩に削れたような傷があります。
 地元の言い伝えで、「昔々、疫病がはやり村人たちが苦しんでいる時に、円空さんが3体の仏を刻まれた。
この円空仏を拝み念ずることにより村人たちは救われた。」とあり、3体が揃うことにより本来の姿で「また悪い事があってはいけない、早くお戻りいただきたい」と強く願っています。(「円空連合/重要なお知らせ」より)
湯屋薬師堂
日光・月光菩薩像

 右が日光菩薩像です。
 そして左が月光菩薩像(44cm)。この月光菩薩が盗まれたのです。
 言わずもがなですが、衣に月と太陽が彫ってあります。
 この私の絵はマンガチックで似ていません。特に日光が。
 月光の方ももう少しキリッとしたしまったお顔をしておられます。私のは笑いすぎです。
 小坂郷土館に円空さんがおられると紹介してあるものがあって、見に行きました。高山市から下呂温泉へ行く道の途中で小坂へ入ります。御嶽の麓の温泉の町…のようです。私はここにおられた円空さんが盗難にあって、現在はおられないことを全く知らずに訪ねたというわけです。
 郷土館に到着して、受付で200円はらって、「円空さんはどこですか?」と伺ったら、「盗難に遭いました」とのこと。「えー!」と驚いたというわけです。私のように円空さんに会いに今もここを訪ねる方がおられるとおっしゃっていました。郷土館の方は気の毒がられて、200円返してくださいました。
清原家住宅(小坂町内の円空さんの写真展示) 土蔵(ここに展示されていたものが盗難にあった)
 せっかく行ったのですから、円空さんの写真でも見て帰ろうと見せていただきました。下記のような案内の文が書かれており、小坂町の円空仏の写真がありました。
 私は、小坂町というこの言い方が気になったのですが、ひょっとすると下呂市に編入されたのは最近なのではないでしょうか。下呂温泉からは少し離れていますし、独自の歴史と文化、くらしがあったことをこの郷土館は展示しているように思います。江戸時代文政年間に建てられた土地の豪農の屋敷に昔の古民具(野良道具・山林器具、調理道具、調度品など)が展示されており、その中に町内の円空さんもおられたというわけです。
小坂町内の円空像
 小坂町の円空作彫刻は、仏像、神像合わせて24体が神社や堂に保存されており(小竹隆夫氏撮影写真参照)その中の6体を借り受けて当館前庭の住家土蔵に展示してある。
 いすれも円空独特のなた彫りで、割った木はだを生かしながら自在に刀をふるい力強い単純な切り込みから生ずる素朴な美しさはすばらしいものがある。
 この他に町内民家3軒に高さ5cm〜9cmという極小型の阿弥陀如来像3体がある。(写真参照)

円空(寛永9年(1632)県下羽島市で出生したという説が有力)
 江戸時代初期の臨済宗の僧で円空上人といわれている。木質を生かした素朴ななた彫りの像を彫りながら美濃周辺はもとより、遠くは東北地方に到るまで各地を行脚して残した作品は数知れない。その作品の技を通してうかがわれる近代感覚は、日本の仏像彫刻の伝統を生かしたものとして近年特に評価されてきている。
 元禄8年(1695年)、64才で没した。
 円空さんは、鉈だけでなく、かなりの刃物を使い分けておられたようです。東北青森からさらに北海道へ渡って造仏されたことは有名です。円空さんが臨済宗だったというのは、何かの間違いではないでしょうか。三井寺との関係で言えば天台宗寺門派ですし、法隆寺との関係で言えばまた違ってきます。○○宗という宗派と関係なく庶民信仰と結びついた神々や仏を造仏された修験僧ではないでしょうか。

小坂町内の円空さんたち

 写真を見せていただいているうちに、小坂町内の方々で縁を結んでおられたのだなと感心いたしました。下呂温泉飛騨合掌村へ行った時に、下呂市にある円空さんを見せていただいたのですが、その時には集落全体を意識することはありませんでした。色々な種類の仏や神々を造っておられることは思いましたが、共同体は感じませんでした。小坂町の円空さんを見せていただいていると円空さんが、村のあちらこちらを訪ね歩いておられる姿が目に浮かぶようです。円空さんが下呂周辺を訪ねるのは元禄4年(1691)ごろであろうと言われていますから、小坂町の諸像も円空さん晩年の作と言うことになります。
長瀬妙喜堂(1)聖観音菩薩
 写真では、立像なのか座像なのかよく分からないのですが、魅力的な表情の観音様です。
 宝珠をもっておられます。私は右と下の二体合わせた三尊形式の本尊なのかなと思ったのですが、違うかも知れません。写真だけで推理しているのですから、いい加減なこと書いているかもしれませんので、お許しを。
長瀬妙喜堂(2)善女龍王
 左と同じ長瀬妙喜堂の善女龍王像です。
 何とも龍の表情がかわいいというか愛嬌があります。円空さんの善女龍王は頭に龍をのせたものだと思っていたのですが、これは何とも奇抜なものです。
長瀬妙喜堂(3)善財童子
 妙喜堂の三体目です。写真を見ながら思ったのですが、これら三体は、三尊像形式で祀られているのかなと。となると、(1)は十一面観音のつもりかもしれません。
 この善財童子像の顔が上手く描けません。円空さん独特の田舎のにおいのする、暖かい、一重まぶたの、昔どこにでもいたような子どもの顔のように思います。笑っているようで、泣いているようで。

 大きさがわからなのですが、一度本物を拝む機会があればなあと思いました。
無数原観音堂龍頭観音(72cm)
 この観音様もいいですね。
 顔は円空さんが簡単に眉、目、口を表現する時のあの彫り方です。鼻の隆起を立体表現せず、真ん中だけをやや高くして一本線だけで表しています。この小坂の神々や仏たちは、この表情が多いようです。
 手抜きだなと私は最初思ったのですが、何度も見ているうちにこれはこれで味があると思うようになりました。
 72cmといえ
ば、かなり大きな像です。
稲荷像
 下呂温泉飛騨合掌村のところでも書いたのですが、円空さんのお稲荷さんはバカにしてるのかと言う気になることがあります。何となく狐がバカ面に見えるものもあるからです。しかし、この稲荷像は哲学的です。たぶん稲荷像だと思うのですが、違うかも知れません。
 どこにあるのかは分かりませんでした。私がメモし忘れたようです。
大島薬師堂薬師如来(44cm)
 これはまたかわいい表情の薬師さんです。笑顔です。
 病の苦しみをきっと和らげてくださりそうです。
 この材は何でしょうか?
 脂のようなものが表面に表れています。
 こういう力の抜けた仏さんを彫れたらいいなと思います。
個人蔵の阿弥陀如来像
 これも似てません。
 絵が下手くそで申し訳ないのですが、感じだけお伝えします。こういう阿弥陀さんが三体写真で紹介されていました。 
 中にはお厨子の中に入っておられるものもありました。
 大きさは10cm未満だそうですから、農家のお仏壇の中で持念仏として大切にされてきたことでしょう。
 岐阜市円空美術館へ行った時にこういう小さい仏さんが三十体ぐらいあったことを思いだしておりました。

小坂町円空さんの神像

 厳密に言えば上の稲荷神は神像ですが、ここではいかにも神像だ!というものだけを取り上げてみます。私は、前にも書いたように円空さんの神像におもしろさを感じません。神さんが神官のような姿をしておられるというのがおもしろくないと思いのでしょう。みんな同じだという印象を持つからでもあります。
 仏は姿形が儀義として決められています。円空さんはそれから逸脱して造像する場合もあります。意識的か無知かは意見が対立するところです。仏像には如何ともしがたい形式があります。
 しかし、日本の神にはそれがありません。ですから表現は自由です。私のように姿形がない形而上学的存在として日本の神を想像しているものには、こういう形式化は疑問が残り違和感でしかありません。
坂下・神明神社
天照皇大神

(48.5cm)
天照皇大神は女性です。円空さんの天照皇大神は女性を意識していない。これはなぜなのでしょうか。
弁財天や鬼子母神は明らかに女性を意識しているのになぜだろうと私は前から思っているのです。こういう神像形式にすると表現しにくいのでしょうか。
落合・富士神社
富士大権現

(45cm)
円空さんは富士山で若い頃に修行したのではないかと書いたものを見たような記憶があるのですが…。
富士神社ですからその中心の像になります。
落合・富士神社
蔵王権現

(40cm)
蔵王権現と言えば、もうそのお姿はあれしかないという憤怒像です。円空さんにもその像があります。大峯山で修行しておられるのですから、なぜこれが蔵王権現?と私は思ってしまいます。
落合・富士神社
白山妙理大権現

(40cm)
円空さんが白山を大切にされていたことは衆知の通りです。泰澄の開いた白山信仰を円空さんもまた大事にされたのでしょう。落合の富士神社に、富士、蔵王、白山という神像を残したというのは意味がありそうです。
湯屋・富士神社
神像

頭に衣冠をしており、一番神官に近い姿です。神像ですから、一般的な姿なのでしょう。
長瀬・長瀬神社
八幡大菩薩

(39cm)
この像が、下半身にボリュームがあります。たまたま材がそうだったのでしょうか。八幡さんと言えば僧形八幡像を思いますが、円空さんはこのように表現されたのだなと思いました。

2008・8・9(土)撮影
2008・9・3(水)作成

円空さんを訪ねる旅 円空さんを訪ねる旅(1)
岐阜県奥飛騨禅通寺
円空さんを訪ねる旅(2)
大津市三井寺
円空さんを訪ねる旅(3)
飛騨丹生川千光寺
円空さんを訪ねる旅(4)
高山市郷土資料館
HPへ戻る 円空さんを訪ねる旅(5)
下呂市飛騨合掌村
円空さんを訪ねる旅(6)
金山町祖師野薬師堂
円空さんを訪ねる旅(7)
美並ふるさと館
円空さんを訪ねる旅(8)
美並平成の円空彫
円空さんを訪ねる旅(9)
岐阜羽島長間薬師寺
円空さんを訪ねる旅(10)
岐阜羽島中観音堂
円空さんを訪ねる旅(11)
岐阜市円空美術館
円空さんを訪ねる旅(12)
洞戸高賀神社円空記念館
円空さんを訪ねる旅(13)
河井寛次郎記念館
円空さんを訪ねる旅(14)
関市弥勒寺・円空館
円空さんを訪ねる旅(15)
天川村栃尾観音堂
円空さんを訪ねる旅(16)
飛騨国府清峯寺
円空さんを訪ねる旅(17)
高山市飛騨国分寺
円空さんを訪ねる旅(18)
下呂市小坂郷土館
円空さんを訪ねる旅(19)
大垣報恩寺
円空さんを訪ねる旅(20)
伊吹山太平観音堂
円空さんを訪ねる旅(21)
大和郡山松尾寺
円空さんを訪ねる旅(22)
磯部町上五知薬師堂
円空さんを訪ねる旅(23)
志摩市立神少林寺・薬師堂
円空さんを訪ねる旅(24)
志摩市片田三蔵寺・漁協
円空さんを訪ねる旅(25)
伊勢市中山寺
円空さんを訪ねる旅(26)
尾張荒子観音寺
円空さんを訪ねる旅(27)
尾張龍泉寺
円空さんを訪ねる旅(28)
豊田市民芸館
円空・木喰展(29)
美術館「えき」KYOTO
 
円空展(30) 
一宮市博物館
円空さんを訪ねる旅(31)
江南市音楽寺
円空さんを訪ねる旅(32)
津島市千体地蔵堂
 
円空さんを訪ねる旅(33)
津市白山町浜城観音堂 
円空さんを訪ねる旅(34)
津市真教寺閻魔堂
 
 円空さんを訪ねる旅(35)
三重郡菰野町明福寺
円空さんを訪ねる旅(36)
奈良県天川村
 
円空さんを訪ねる旅(37)
飛騨上宝町本覚寺 
 
円空さんを訪ねる旅(38)
上宝ふるさと歴史館
 
円空さんを訪ねる旅(39)
上宝町桂峯寺 
円空さんを訪ねる旅(40)
美濃市の円空仏
 
円空さんを訪ねる旅(41)
奈良斑鳩法隆寺
 
円空さんを訪ねる旅〈42〉
長間薬師寺から竹鼻へ
 
円空さんを訪ねる旅(43)
白川町和泉薬師堂
 
円空さんを訪ねる旅(44)
金山町祖師野八幡宮
 
円空さんを訪ねる旅(45)
金山町祖師野薬師堂
  
円空さんを訪ねる旅〈46〉
白山町佐見庚申堂他
円空さんを訪ねる旅〈47〉
中津市加子母大杉地蔵尊
 
円空さんを訪ねる旅〈48〉
下呂市温泉寺
 
日本の石仏めぐり 円空さんを訪ねる旅 木喰さんを訪ねる旅 HPへ戻る