円空さんを訪ねる旅(67)
高山市朝日町宝蓮寺
(岐阜県高山市朝日町立岩)
高山市に朝日町という場所があることを知りませんでした。円空はこの朝日町12カ所に24体の仏像や神像を残しています。神社に残された神像に「元禄四年(円空60歳)五月八日」銘があることから、他の神仏像も同時期の晩年作と思われます。
2016年6月7日(火)ガンダーラの会の円空さんを見るツアーに参加することができました。
何でも神社にある円空仏はご神体だと言うこともあるのでしょう、拝観させないと取り決めがある地域があるようです。
今回のツアー最初の訪問地は浄土真宗大谷派の宝蓮寺でした。ご住職が普段はしまってある円空仏二体を出してくださっていました。
(1)善財童子
(60cm)
円空作の僧形合掌像は、地蔵菩薩像(27体)、善財童子像(聖観音や十一面観音の脇侍として、善女龍王とともに三尊形式でまつられる場合など)、こんがら童子像(不動明王の脇侍として10体)、聖徳太子像としてなどの場合があるとのことです。
宝蓮寺のこの僧形立像は、背銘に「善財童子」とはっきり書かれています。そして単体としてあるのはここだけだと言うことでした。磐座のようなものにのっておられますが、足の表現は省略されています。
背銘には頭部に最勝を表す「ウ」…ウサギが横向きになったような字が滲んでいます。そして大日如来の三種真言が書かれています。大日如来の三種真言について教えていただきました。
まず、向かって右が大日報身真言(アビラウンケン)で大日如来そのものに帰依する意だそうです。
真ん中は大日応身真言(アラバシャナウ*円空はアラバシャキャ)で大日如来が色々なお姿で現れることを意味し大日如来の分身を意味しているそうです。
左は、大日法身真言(アバンランカンケン)で宇宙そのものを表しているとのことでした。
(2)阿弥陀如来
(32.0cm)
この像が通常の円空仏と異なる点があります。蓮座と磐座がないのです。頭は肉けい表現をしているようなので如来であろうと思われます。衣装の下の手が意識されていません。円空がこのような座のない仏像を彫るときは、神像として彫る場合が多いと言うことでした。ということは、これはどこかの神社に祀られていた可能性があると言うことになるのでしょうか。
背銘に尊名の手がかりがあります。例の通り、まず頭部に最勝の「ウ」。そしてその次に阿弥陀如来を表す「キリーク」が書かれています。そして大日如来の三種真言となっています。
このお顔はどこかでお目にかっかった記憶があります。確か上宝で。静かで穏やかな表情をして冥想しておられるように見受けました。上宝の同じような顔をされた像は確か舌を出しておられたように思います。
二体の円空仏とも背銘が見事に残っています。赤外線カメラでなく普通に写して修正を施しましたが見事に墨跡が残っています。