円空さんを訪ねる旅(77)
飯田市願王寺千面菩薩
(長野県飯田市鼎上山)
円空さんを訪ねる旅(76)飯田市運松寺の続きです。飯田市で2番目に訪れたここ願王寺は天台宗の寺でした。ちなみに運松寺は浄土宗です。
そもそも千面菩薩という名称の菩薩はどの経典にも出てこないもので、円空が独自に考え出したものです。
それでは、願王寺の千面菩薩の紹介ををします。それから、願王寺(天台宗)の他のユニークな仏像群を紹介したいと思います。
(1)願王寺の千面菩薩
(21.0cm)
左の譲状は荒子観音寺即全師からその弟子である願王寺幸道師に渡されたものです。同じ文面のものが運松寺にもあります。事情は前に書いたように、兄弟子である幸道師が、即全師の次男である即中師に運松寺を紹介されたことに対して、そのお礼として先年(昭和47年)発見された千面菩薩のうちの一体を翌48年7月に送られたということです。 願王寺は、護摩堂の奥に本堂があります。円空さんは上の写真のように本堂左壁前に軸がかけられた壇上に安置されていました。運松寺の像のように体にS字状のくねりはなくまっすぐ安定した状態で立っておられます。像高は全く同じです。目や眉、口はこの像の方が鋭く彫られています。この像も鉈で割った面をそのまま生かし最小の彫りで作像されています。底面がほぼ二等辺三角形です。 背中の濃い色の所は桧の油分だと思います。彫ったら出てくるときがあり、顔などに出ると「えらいこっちゃ」になるところですが、円空さんは気にもとめられなかったのではないでしょうか。 |
(2)願王寺護摩堂の諸像と叱枳尼天厨子
本堂には大日如来がまつられています。護摩堂厨子の中には叱枳尼天(茶枳尼天)が祀られているらしいのだが、お姿は見られません。ヒンズー教の神らしく、狐に乗った女性像で剣、宝珠、稲束、鎌などを持仏にし、稲荷神と習合されたらしい。この寺は立川流叱枳尼天信仰を今に伝えておられるようで、私は初めて出会うお寺です。下平知山作風神雷神像、不動明王像はよく見るお姿ですが、山姥神社と描かれた額の下におられる天正十八年樹龍作異形神仙像や八面八臂の那羅延天(梵天)は、初めてでびっくりしました。
(1)護摩堂異形神仙像
(2)護摩堂厨子の欄間彫刻
これらの彫刻は立川流坂田亀吉等作だといただいたパンフレットに書いてありました。全く知識がないのですが左右の像は手長足長(日本書紀に出てくる神)で、上は亀、獅子、龍です。下は二十四孝の話から材をとったものです。神社の社か御輿のようなイメージの厨子なのですが、豪華絢爛な彫刻に装飾されています。上の異形神仙像といい、この厨子といい護摩堂内にありますから、相当煙や油で黒ずむことでしょう。
境内の鐘楼に干し柿が吊ってありました。季節を感じます。