富山大岩日石寺不動明王
(富山県中新川郡上中町大岩163・рO76−472−5950)
富山に不動さんがおられる…昭和53年発行日本の美術147「石仏」(至文堂・鷲塚泰光)の表紙にこの日石寺不動明王が出ているからこの時にお目にかかったのであろうが、記憶にない。
富山県へこの不動明王に会いに行こうと思ったのは、つい最近である。
「富山へ行く」と言ったら、「何があるの?」と言われた。ウーン、答えが難しい。
富山観光といえば、立山、八尾風の盆ぐらいしか知らない。食べ物では、ます寿司、、魚津のホタルイカ?教科書で出てくる歴史上の出来事では、一向一揆と下克上、米騒動発端の地。公害問題で神通川のイタイイタイ病があったなあ。その他には、越中ふんどし、富山の薬売りしか富山のことを知らない。
京都から高速道路で300km、およそ片道4時間である。
富山大岩日石寺不動明王他は日本の石仏を代表するような石仏である。現在磨崖仏が国の重要文化財にそして石仏が史跡に指定されている。日本の石仏が国宝や重要文化財に指定されているのは稀であり、それだけでもこの磨崖仏が貴重であることが分かる。
(1)重文大岩日石寺磨崖仏全景
これが、磨崖仏の全景である。日石寺本堂は、凝灰岩の自然の岩山を内部に取り込んで建てられている。この大岩に、高さ6m幅11m奥行き2.2mの龕を穿ち、前方に約20度傾斜した面に五体の仏たちが彫られている。もともと不動三尊が最初に彫られたようである。不動三尊は、右(向かって左)に制多迦童子、左(向かって右)に矜羯羅童子を配置する。制作年代はおそらく11世紀末か12世紀初頭、つまり平安時代末期であろうと言われている。
その後、右に阿弥陀如来座像、左に僧形座像を追刻したようである。こちらは、12世紀末つまり平安から鎌倉時代へ移る頃であり、不動三尊から百年後の作と言うことになる。
不動明王は半肉彫りで高さ3.36mある。二童子は丸彫りに近い高肉彫りで2.14mあり、主尊不動明王より小さく彫られている。
いくつか穴の後がある。風雨から守るための覆屋が何回も作られたことが想像できる。
(2)中尊不動明王
この迫力は凄い。今は判然としないが台座の上に座していると思われ、目の位置辺りから上に尊像が覆い被さってくるように感じる。傾斜20度を生かしている。何よりこの像の魅力はその表情である。半眼の不動明王はどうも私は好きになれないのだが、これは教王護国寺(東寺)の国宝不動明王像に匹敵するような見事な彫りである。浮き彫りという制約がありながらもこれだけの立体感を出しているのにも驚く。重要文化財に指定されているのもその彫りの見事さに起因していると思われる。石を相手にこれだけのものを残している作者に拍手である。
この岩には「宗俊七日来籠」「祇南房」「玄勝房」「南智房」の文字が中央にあるらしい。これが作者を表しているのか参籠した修験者なのか、おそらく参籠した修験者なのであろうが、およそ九百年間人を惹き付け続けてきた不動明王である。私が今まで見てきた不動石仏の中で最高傑作であることに間違いはない。
(3)阿弥陀如来座像と矜羯羅童子像(右側)
阿弥陀如来座像と矜羯羅童子 |
向かって右側の二体である。阿弥陀如来座像は大変整った像である。優しいお顔である。大分の磨崖仏ほどの大きさがないので目立たないのだと思うが、大変見事な優品だ。よく見ると、顔は丁寧にツルツルの状態にまで彫ってあるが、体部はノミ跡が残っている。
矜羯羅童子は、上半身がやたら目立つ。四等身ぐらいで、バランスが悪い。首に巻いている肩布はなかなかオシャレである。
(4)制多迦童子像と僧形座像(左側)
制多迦童子像と僧形座像 |
左側に彫られている僧形座像と制多迦童子像は、欠損や損傷が激しく、おおよそしか見て取れない。制多迦童子像は、体をくの字に曲げ動きのある像のようである。僧形座像も損傷が激しいが、阿弥陀如来同様丁寧に彫られていたことが察せられる。
■石仏巡り近畿の巻
(1)京都石仏巡り
観光都市京都は他にたくさんの観光資源を抱えているので石仏がメジャーになることは、まずありません。もともと石の文化が発達しなかった日本ですから木像に比べたら少ないのでしょう。観光都市京都のメジャーなものも素敵ですがへそまがりの私はこのマイナーな石仏を訪ねることにします。
近江の石仏の魅力にはまってしまいました。
(3)大和(奈良)石仏巡り
大和はさすがに古い仏でしかも優れた石仏たちの宝庫です。足を伸ばしてみます。
(4)紀伊(和歌山)石仏巡り
粉河寺・根来寺を行く |
(5)播磨(兵庫)の石仏巡り
北条五百羅漢 | 古法華石仏公園 | 猪名川町の木喰仏 |
(6)三重の石仏巡り
伊賀上野石仏巡り | 石山観音磨崖仏 |
大分はすごい!としか言いようがありません。
大分臼杵磨崖仏 | ||||
ホキ石仏群 (ホキ第二群石仏) |
堂ケ迫石仏群 (ホキ第一群石仏) |
山王山石仏 | 古園石仏 | 満月寺の石造美術 |
■豊後地方の磨崖石仏 | ||||
熊野磨崖仏 | 元宮磨崖仏 | 犬飼磨崖仏 | 菅尾磨崖仏 | 元町磨崖仏 |
高瀬磨崖仏 | 岩屋山磨崖仏 | 国東半島石造美術 |
■信州(長野)の石仏巡りの巻
江戸時代の石仏の宝庫、信州は魅力的な仏たちの宝庫です。
万治の石仏 | 修那羅安宮神社石仏石神群 | 安曇野道祖神 | |
守屋貞治1諏訪温泉寺 | 守屋貞治2高遠健福寺 | 守屋貞治3高遠大聖不動 | 守屋貞治4駒ヶ根光前寺 |
■福島石仏巡りの巻
陽泉寺来迎三尊仏 | 岩谷観音磨崖仏 |
■箱根の石仏巡りの巻
元箱根石仏・石塔群 | 大湧谷延命地蔵・賽ノ河原・姥子石仏群 |
■富山の石仏巡りの巻
大岩日石寺不動明王磨崖仏 |
■他府県の石仏
西山光照寺石仏(福井県) |
願成就院五百羅漢(静岡県) |