円空さんを 訪ねる旅(96) 観音寺 (名古屋市中川区) |
私は名古屋の地理に疎いので受け売りしかできないのですが、この観音寺は、荒子観音寺のすぐ近くなのだそうです。荒子観音寺には、円空仏が、1255体現存し、他へ遷座したことが明確な11体を含めれば1266体になるという、まさに円空仏の宝庫の寺です。「浄海雑記」巻三に「延宝四丙辰年極月廿五日 日本修行乞食沙門 圓空(花押)」の記載があります。円空が延宝4年荒子観音寺に留錫し、ほとんどの像を造仏したであろうことも明らかになっています。
これから紹介する観音寺の十一面観音像もおそらく延宝4年頃の作であろうということです。
十一面観音像
(137.0cm)
右手で水瓶を持ち、左手は衣から出ています。磐座の上の蓮座に載っています。
化仏ですが、正面以外に六面あります。頂上仏はありません。阿弥陀仏が真正面にあります。正確には十一面観音ではありませんが、時として円空は省略しますので、一応十一面観音ということにします。
円空にとって十一面観音は特別な意味のある仏だと思うのですが、どういうわけか、尾張では3体しかないのだそうです。荒子観音寺に一体もないというのも円空の謎の一つだそうです。
観音寺は尼寺です。円空が生きていた時代も尼寺だったそうです。この像は、その尼僧に似せて作られたと伝わっているそうです。尼僧が荒子観音寺へ使いに行って円空と知り合い、彫ったのではという推論もあると聞きました。尼寺と円空の関係というのもよく問題になるテーマです。
同行のSさんが背面の材が丸太を貼り合わせたように見えることを質問されました。Sさんはこの観音さんの背後に回って確かめられました。まず、頭の後ろに化仏がないこと。背銘はなく丸太を貼り合わしているのではなく丸く彫ってあること。小さな穴が多数開いていることをレポートしてくれました。狭くて高い場所だったので、無事降りてこられるか心配しましたがよかったです。
現在は尾張地方の某寺におられる十一面観音のことを「円空さんを訪ねる旅(73)」で紹介しているので参考にしてください。今回の尾張の円空仏ツアーでも訪れました。少し紹介します。この十一面観音はもともと八事の山中の小祠堂にあったとのことでした。こちらには、頂上仏があります。頂上仏を入れると7面です。正面を加えると8面。阿弥陀仏があるのは同じ。こちらは磐座の上の踏み分け蓮座に載っておられます。水瓶はもっていません。
観音寺のお顔はふくよかで貫禄があります。下の観音さんは、凛々しく若い感じがします。