円空さんを 訪ねる旅(97) 願成寺 (名古屋市中川区) |
願成寺には、7体の円空さんがおられる。
(96)の八田観音寺と(97)の願成寺の中間に荒子観音寺があるらしい。この寺の円空さんも、荒子観音寺との関係が深い。
願成寺には、2体の柿本人麻呂像がある。そしてあと5体の小像がある。
(1)二体の柿本人麻呂像
(38.5cm・52cm)
荒子観音寺にも柿本人麻呂像がある。高山の郷土資料館にもある。円空の柿本人麻呂像を4体残してる。その内の2体がこの寺所蔵である。
人麻呂像は二つの目的で彫られる可能性があるらしい。@人麻呂(ひとまろ)=「火、止まろ(る)で火災除け、A和歌を詠む会の会場に安置する…この二つである。
この寺に2体もある訳は分からない。和歌を詠む集まりがこの寺でよく行われていたのかもしれない。
この二つの像、雰囲気が違う。左の小さい方の像は、一つの材を二つに割って、荒子観音寺と分けたことが、明らかになっている。造像の仕方もよく似ている。右の方は大きく、左を向いている。相当痛んでいる。
右の人麻呂像は、ひどく朽ちている。何が違ってこのような朽ち方の違いが起こるのであろうか。材の違いかなと思ってみたが、判断つきかねる。
背面に文字が書かれている。右から「願成寺 高須賀山 石見野 柳本」という文字が書かれている。そして左には絵のようなものが書かれている。高須賀は願成寺のある土地の名前。石見野は人麻呂の生誕地。ただ、この文字は円空の手ではなさそうだ。 | 荒子観音寺像と願成寺像を合わせると底部の材の伐り後が重なった。 |
(2)5体の小像
@文殊菩薩
(16.5cm)
獅子の上に蓮座があり、その上に文殊菩薩が座している。獅子を丁寧に彫っている。火焔状の頭。背銘がはっきり見える。頭に最勝のイがあり、三種真言があるところから円空後期の作と思われる。 笑みをたたえた優しいお顔をしておられる。 |
A宇賀弁財天
(16.9Cm)
頭に宇賀神を載せ、甲冑をつけ、宝珠を持ち磐座に座している弁財天である。 背銘は、分かりにくいが、三種真言が見える。おそらく、文殊菩薩と同時期に作られた像であろう。 ふくよかで穏やかな表情の弁財天である。 |
B他の三像
観音菩薩 (普賢菩薩) (16.5cm) |
烏天狗 (15.5cm) |
宇賀神 (8.5cm) |
お気の毒なほど顔などの損傷がひどい。観音菩薩は文殊菩薩と対の普賢菩薩かもしれない。そうなると中尊の釈迦如来があったかもしれない。宇賀神は体部にその面影が残っている。