円空さんを訪ねる旅(100)
円空学会蓮国寺研究会
(岐阜県羽島郡笠松町八幡町16)
2017年11月26日(日)蓮国寺で現地研究会が開催された。40名を越える参加者であった。蓮国寺は昨年訪れており、2回目である。(前回の記録は「円空さんを訪ねる旅70蓮国寺」)にある。今回は特別に個人蔵の像内品のある円空仏が拝見できるというので楽しみに参加した。
(1)伝教大師か月光菩薩か
(71.0cm)
この像の背面には不思議なカタカナと判読不明の文字がある。詳しくは前回の訪問時の記録を見ていただきたい。右肩に伝教大師と読める文字があり「伝教大師ではなかろうかと推定されている。しかし伝教大師像が他になく、円空と天台宗では三井寺の寺門派とは関係が深いが、山門派との関係は薄そうである。この寺は日蓮宗であり、なぜこの寺に伝教大師?という疑問は残る。そもそも背銘は円空の文字かどうかも疑問である。 頭部に化仏がある。観音菩薩で化仏は阿弥陀如来の可能性もある。 しかし参加しておられた方の中から月光菩薩ではないかという意見が出た。向かって左腹部から足にかけてに月があるからである。 円空の月光菩薩の月は肩辺りににあると思うが月光菩薩もありそうだ。となると化仏は薬師如来か。月光菩薩単独であることは少ないであろうから、日光菩薩や薬師如来がこの大きさであった可能性もある。 なかなかおもしろいことになってきたなと思いながら拝聴した。 |
(2)釈迦如来
(34Cm)
今回の研究会で公開された個人蔵の釈迦如来座像は、後代金泥が塗布された像であった。注目点がいくつかあった。
@頭部とりわけ肉髻が丁寧であること
A蓮座の下の座が見たことがないような不思議な座であること
B天衣がその下の座まで垂れ下がっており、天衣と座の間を彫り抜いている。これは円空仏の中では3例しかない珍しいものであること。3例とは津市真教寺の十一面観音と群馬県富岡市黒川不動堂の十一面観音とこの像である。
Cほぞ穴と埋め込みがあり、像内納入品があること
像内納入品は5粒の丸い小石と、金剛界五仏種子が書かれている紙片である。
D背面に左上から右下に衣の線と腕の線が見られること。斜め線は初期像にある。
E座に後背をつけたと思われる溝と木片があること
この像は寛文後期の円空仏の特徴をいくつも備えている。
像内納入品について小島梯次円空学会理事長が講演されたことがある。その時の概容が参考になるの書いておく。そもそも像内納入品は供養のためであるという前提でお話があった。
1,像内納入品のある円空仏は現在14体(全5400体中)。そのうち中身が確かめられているのは6体。中観音堂に3体ある。
2,円空が納入物を入れたのは寛文9年(1669・38歳)から(延宝2年(1674・43歳)までの5年間。鉈薬師の阿弥陀像・日光菩薩から三重県志摩市三蔵寺観音菩薩や岐阜県関市松見寺峯児大権現あたりまで。岐阜県羽島市で最近個人蔵の釈迦如来像(寛文10年頃の作)が発見された。
3,像内納入品のある円空仏とその中身
・仏舎利石は6例とも、金剛界五仏種子(梵字・種子)は5例ある。
・仏舎利石…舎利(釈迦の骨)の代わりに入れる(中観音堂阿弥陀如来像と羽島個人蔵釈迦如来は5個 不動明王像は9個)
個数は供養する人の人数を表しているのではないか。
・金剛界五仏種子(ウン阿如来・キリーク阿弥陀如来・バン金剛界大日如来・タラーク宝生如来・アク不空成就如来)
種子の数は供養する人数を表しているようだ。