円空さんを |
上毛三山の一つ榛名山(榛名富士1390m)の北東に伊香保温泉があり、水澤寺は東にある。水澤寺は天台宗で、板東三十三ヶ所第十六番札所である。榛名神社は南西にある。榛名山は火山であり榛名神社は火之神を祭神にしている。神仏習合が早くから進み、9世紀の寺院遺跡もある。
円空が水澤寺を訪ねたのは榛名山へ登るためだったのかもしれない。妙義山の妙義神社(その神宮寺である石塔寺)に円空仏がある。榛名山麓の水澤寺に円空仏が残っているのは偶然ではないのかもしれない。となると国定忠治の赤城山の赤城神社にもあったのかもしれない。
それにしても群馬県には火山がたくさんあって、有名な温泉があちこちにあるのだなと思う。長野もそうだが、いい温泉があっていいなと羨ましくなる。
水澤寺の阿弥陀如来座像
(53.2cm)
何とも愛敬のあるお顔をしておられる。私は2回目のご対面である。前回(平成17年)は水澤寺に円空さんがあることを知らずに来た。寺宝を展示しておられて、「円空仏あります」という案内ポスターがあってそれはぜひと思って拝観した。
この円空さん、目が特徴的である。木目が左右の眼球と重なって、パンダかタヌキみたいな目になっている。「円空のたぬき阿弥陀」である。体も木目が左上から右下に流れている。材は杉のようだ。円空さんはヒノキを使うことが多いと思うのだが、こういうおもしろいものもあるのだなと思う。
頭と顔が大きいので幼児体型になっている。手の印相は阿弥陀の上品上生である。磐座の上に蓮座、その上に座っておられる。
釈迦堂におられた。駐車場に隣接している釈迦堂には、板東三十三ヶ所の観音像や水澤寺に伝わる様々な仏像や絵画が飾られていた。
駐車場には、農産物の販売をしておられた。大仁田ネギがあった。関西ではとんと見ないネギである。釈迦堂の向こうに榛名山が見えた。
水澤寺のあと、富岡市にある一ノ宮貫前神社へ行った。そして木喰仏のある永隣寺へ行き、最後に黒川の不動堂へ行った。貫前神社と不動堂は前回の記録があるので、あえてページは作らないが、黒川の不動堂十一面観音については、いくつか気になることがあった。
まず、不動堂の十一面観音の手が円空の彫りなのかどうかということである。まず、手のつけ方がかなり雑である。大きいものや小さいものが混在している。円空の彫ったものとそうでないものが混じっているのではないかということであったが、全部後世にだれかが作ったのではないかという意見が多かった。
切られた座にはいつもの磐座の上に蓮座があるものであろう。かわりに返り花の座をくっつけてある。なぜ切られたのかである。磐座の上に蓮座を置くのは修験道のやり方であり、明治時代になって円空の仏の中で座が切られているのは、みな修験道の痕跡を残さないためであると言っておられる方がおられた。