円空さんを訪ねる旅(121) 個人蔵の円空さん (岐阜県加茂郡白川町白山) 薬師如来 観音 青面金剛神 |
苗木藩は明治維新後廃仏毀釈を徹底したため、このお宅にある円空仏も昭和28年までは家の方に隠してあったという。個人宅にある円空さんは、十数センチの小さい像が多く、このお宅もそうなのかなあと思っていたら、大外れ。ますその大きさに驚いた。
この集落は10年前までは80戸住んでおられたらしいが、現在は43戸になっているらしい。このお宅はご覧の通りの大きなお家で大型犬を3頭飼っておられるた。家の前には石積みの田んぼがあり、先祖代々手入れをしてこられたことが偲ばれる。ガンダーラの会のバスツアーで、私たち30名近い者がお邪魔したのであるが、私たちを待っていてくださった。お茶を出してくださり、草餅をついて出してくださった。恐縮した。
私は山地の冷たい水で育てた米は旨いと義父から聞いたことがある。それを確かめると、「いや、いつも食べていてそれが他と比べて特別美味いとは思っていませんけど、米そのものは小粒かな」とおっしゃった。自然体で円空さんと同居しておられる、そう思った。
桜の咲いているあたりから昔の道が和泉まで繋がっているそうである。道は現在は使われていないらしい。和泉には薬師堂があり円空仏が三体(青面金剛神・観音・地蔵)おられる。このお宅の円空さんは二つの神棚に祀られていた。お話によると、元々はお宅は上の写真の真ん中あたりに住居があったといい屋敷という地名が残っているという。先程言った道にお堂があり、そこに円空さんが祀られていた。廃仏毀釈で捨てられかけた円空仏を、ここのご先祖が大切に神棚に残されたようだ。
(1)薬師如来
(64.0cm)
薬壺を持って小首を傾げ大変優しお顔をしておられる。ぽってりした薬師如来も円空にはあるが、この薬師さんは整ったお顔をしておられる。衣服や体部にたくさんの細い線が入っている。なぜこのように多くの線を彫る必要があったのだろうか。頭の彫りもやや雑で、縦線以外に不必要な横線もある。 背銘は最勝(ウ)と薬師の(バイ)と金剛界三種真言と思われるが、弱々しく見える。 |
(2)観音
(59.0cm)
薬師さんは斜めを向いておられるが、観音様は冥想しておられるようで真っ正面を向いておられる。頭は宝冠なのか火焔状である。腰の辺りにくびれがあるが、もともとの材のせいか。足が見えない。両側面に鰭丈の衣服表現が見られる。背銘は頭部に最勝(ウ)、背中上部に尊名観音の(サ)があり、金剛界三種真言が書かれている。
円空さんの顔の彫り方であるが、眉と目を線彫りするのは省略法なのだと思う。鼻はやや真ん中を高くするだけである。口を三日月状に彫り窪めて、ちょこんと口を彫り出す。真似してみてわかるのだが、これがなかなか難しい。
(3)青面金剛神
(61.0Cm)
青面金剛神である。まず背銘から。最勝(ウ)の下に釈迦如来の(バイ)。そして金剛界三種真言。それにしてもであるが、このお宅にある円空像はいずれも木にクセがある。ねじ曲がって実に彫りにくそうな材である。この木も節のような物も見えるし、鉈で割ったときにすでに曲がりくねっている。標高800m~900m辺りの山中であるから寒さも雪も平地とは比べものにならないのであろう。宝珠を手に怒髪で憤怒相。足元には三猿。 |