円空さんを訪ねる旅 (122) 下呂温泉合掌村 Part2 (岐阜県下呂市森) 小川神明神社神像群 少ヶ野住吉神社神像群 金山町熊野神社神像 個人蔵青面金剛神他 |
もう一度、ゆっくり訪れたいと思っていた円空さんのおられる場所でした。
下呂温泉合掌村の円空仏は撮影自由である。これがありがたい。美術館や博物館の撮影は難しい。ガラスケースに入っているので照明が反射する。暗すぎて手ぶれを起こす。こういう場所に展示されているという写真が私の撮っている写真である。
私はこの合掌村円空館の特徴は3つあると思う。
①下呂市近郊の神社の神像群を収集展示されていること。
②下呂市近郊の個人蔵の青面金剛神像を多数展示されていること。
③背銘展示を重視しておられること。
以前に訪ねた記録が「円空さんを訪ねる旅(5)下呂温泉合掌村」にある。その時はどんな展示なのかも知らず、ここを訪れましたので、あこがれていた個人蔵の青面金剛神に出会えてうれしかったのを覚えています。個人蔵ですから絶対見ることは出来ないだろうとあきらめていたからです。それから10年余り経過して、円空館は新しく建て直され、資料館としての体裁を整えておられていました。
(1)青面金剛神①
(下呂市小川個人像・49.6Cm)
三面の顔の大きさと体部のバランスがよい。側面も伏せ目がちで三つの面に統一感がある。中面(三眼)の引き締まった厳しい顔と怒髪が合う。宝珠を持つ手の角度も適切だ。円空さんのこの形式の青面金剛神像の中で最高傑作だと思う。
円空さんの青面金剛神にはもう一種ある。それはお寺に残されている全身像でかなり大きい。関市永昌寺にあるもので、足元に男女の像がある。
円空の青面金剛神は現在16体確認できる。(『円空仏入門』(小島梯次・P103)下呂町に5体、金山町に2体、南接する加茂郡白川町に3体あるそうです。つまり晩年飛騨で造像した頃に多く作ったことになる。今回のバスツアーの隠れたテーマは青面金剛神だと私は思っていた。
三猿であるが、向かって左から「言わざる・見ざる・聞かざる」だと思う。猿らしくない三猿である。
背銘であるが、最勝「ウ」の下に金剛界大日如来三種真言が書かれている。左下に「青面金剛神元禄四年未辛 庚申卯月二十二日悗日」の文字がある。円空が下呂のこの辺りを元禄4年頃に巡錫していたことが分かる。この像は彫られた年月日がはっきり分かる貴重な像でもある。「悗日」は一人でいる様という説明を受けた。「悗」を漢和辞典で引くと、①すなお。従順なさま②わすれる(忘)とあった。円空は何を込めて「悗日」と書き残したのであろうか。
(2)青面金剛神②
(下呂市森個人蔵・55.0Cm)
この像、恐い顔をして、迫力満点である。なぜか腕が4本である。肩及び体部から手が出ている。円空は体からすぐ手が出る像を他にも彫っている。日光不動三尊の童子像、高山市の愛染明王像である。 手に持っているのはシュケラか。蛇だという説もあるという。 青面金剛神については「関市永昌寺」のところで書いた。 この像の背面は真っ黒で写真に撮れなかった。赤外線も駄目だった。 |
(3)青面金剛神③④
左は、金山町で彫られたもので、①と同じく3面である。右は前回撮ったもので、大変優しい顔をしている。小川の個人宅に残されたもので、小川にはもう一体同じような優しい1面の像がある。
(4)地蔵菩薩
(下呂町小川地蔵堂・75.0cm)
背の高い八頭身像で。お顔も美しい。 頭頂部が尖っているが横から見ると気にならない。ほとんど鼻は彫っていないのだが、上唇と下唇及び頬を少し掘るだけで立体感が出ている。 背銘である。頭の後ろに最勝「ウ」。その下に地蔵の「カ」、右不動の「カーンマーン」、左に毘沙門天の「ベイシラマンダヤ」。 中央に地蔵大菩薩の尊名。 その左右に金剛界大日三種真言のうち二つが見えているのですが、左にもう一つありそう。 前回行ったときにもこの地蔵尊は目立っていた。クルクル回る台に乗っておられた。 やっぱりいくら安定していると言っても地震国日本。回さないのがいいと思う。 |
(5)神明神社白山妙理大権現他
(下呂町下呂町小川45.0と54.0cm)
神明神社というのは天照大皇神を祀っている神社だ。小川の神明神社の像は「白山妙理大権現」「白山御前大行事」「白山池権現」などの白山の神々が揃っている。
なぜなのだろうと思っていたら、明治42年の記録をいただいた。
小川神明神社は十四社が合併し、十三体が合祀され小川神社と名乗ったことが、記されています。「神社明細帳」y神明神社この地域の祠堂と神社をいっしょにしたようです。そこに祀られていた円空仏が集められたと言うことのようです。その中に白山三神がいくつも合祀されたため何体もあります。
(6)神明神社各地の神々
(下呂町下呂町小川)
円空さんはこまめに尊名を書いています。ぼくとう冠を被っている神像と動物の顔をした神像。左から鹿島大明神、平安城稲荷大明神、熊野大権現、立山大明神。 他に伊勢太神官、富士浅間菩薩も、真先稲荷大明神ありました。 |
(7)稲荷神色々
稲荷大明神(29.2cm) 下呂市下呂町少ヶ野住吉神社 |
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この稲荷神がおもしろい。木肌が変化して面白味を出している。表情も哲学している。狐というより、人間っぽく見える。いや神である。確かに。 合掌村には、小川神明神社神像群、少ヶ野住吉神社神像群、金山町熊野権現神社神像群が展示されている。その中で稲荷神がおもしろく目についた。 |
稲荷大明神・熊野神社(金山町福来)36.0cm~53cm | ||
背銘である。 注目は真ん中の尊名。 秋荷大明神と書いてある。 おそらく稲荷と書き間違えたのであろうということであった。 こんな間違いをするのですね、円空は。 熊野神社には白山妙理大権現が二体と白山十禅師もあった。前に写っている三体のようだ。 |